神に選ばれなかった者達 前編
人様の玩具を勝手に奪う。

これはとんでもない大悪党である。

兄弟は当然怒るし、返せと要求する。当然。

でもほたるは、そんな兄弟の言い分は無視。

玩具を勝手に奪って遊んで、知らん顔。

すると兄弟はブチギレ。ママに言い付けて、「ほたるが僕の玩具を取った!」と訴える。

こうなるとママも、さすがに無視は出来ない。

ほたるに向かって、叱らざるを得ない。「お兄ちゃんの玩具を返しなさい」と。

しかしほたるの目的は玩具ではなく、ママに構ってもらうことなので。

兄弟の玩具を奪う→兄弟が怒ってママに言い付け→ママに叱ってもらえる。という流れが出来上がってしまい。

結果、じゃあもっと兄弟達に悪戯しよう!ってことになってしまった。

最悪の悪循環。

こうして、次々人のものに手を出し始めたほたる。

とんでもない悪童だよ。

単なる甘ったれ小僧だったほたるが、酷い悪知恵を巡らせるようになったものだ。

しかしほたるとしては、ママの愛情、ママの関心を引くことに一生懸命だった。

生まれつき甘ったれだったほたるは、自分が一番でなければ納得出来なかった。

他の兄弟みたいに、兄弟達で仲良く親の愛情を分け合う、ということが出来なかったのだ。

難儀な性格だろ?ふぁにの親友。

しかし、ほたるの新しい悪戯作戦は、長くは続かなかった。

ママも兄弟達も、同じことを繰り返すのに、段々飽きてきたらしい。

ほたるが玩具を奪っても、兄弟達はもう怒らなかった。

「あーあ、また始まった」みたいな、白い目で見ていた。

ママもママで、兄弟達に「ほたるのことはもう放っておきなさい」と躾けていた。

そうして結局、また誰も相手にしてくれなくなったほたる。

またしても、大ピンチ。

思えばほたるも、必死だったんだろう。

ママの関心を得ようと。ママに見捨てられまいと、必死だった。

だからって親を困らせるようなことばかりしたら、逆効果だと思うんだけど。

幼いほたるには、そんなこと分からなかった。

とにかく、構って欲しかっただけ。

ママも、この時、ほたるを放っておくんじゃなくて。

ちゃんと向き合ってくれたら。ほたるの悪戯に呆れるのではなく、根気強く相手をしてくれたら。

そんな余裕があれば、きっと後の悲劇は避けられただろうに。

残念ながら、既に四人もの子供を育てているほたるのママとパパに、そんな余裕はなかった。

なまじ、上の子二人が聞き分けの良い子だったものだから。

余計、言うことを聞かないほたるが、煩わしかったのかもしれない。

いちいち相手にせず放っとけば、成長と共に悪戯癖も収まるだろう。

そんな風に思っていたせいで、その後大変なことになると、この時はまだ知らなかった。

結局、相手にしてもらえなくなったほたるの悪戯は、次の段階に移行した。

今度は、兄弟の玩具を奪うだけに留まらず、汚したり、壊したりするようになった。

こうなると、もう完全にいじめだよね。

人のものを奪う。汚す。壊す。大悪党だよ。

これには、さすがにママも兄弟達も、無視は出来なかった。
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