神に選ばれなかった者達 前編
翌日からも、ほたるはしばしば、同じように駄菓子屋で豪遊した。

毎日だと、ママに怪しまれるかと思ったので。

大体3日おきとか、怪しまれない頻度で。

大変良い気分だった。自分だけの宝物を見つけた気分だった。

悪いことをしている、という自覚は、あまりなかった。

お兄ちゃんもお姉ちゃんも、しょっちゅう友達と遊びに行って、お菓子を買って食べてるじゃないか。

自分はこれまでほとんど、お小遣いをもらってなかったんだから。

その分を取り返してるだけだ、と。自分にそう言い訳していた。

実際、お菓子を買うくらいは可愛いものだった。

そもそも、親のお金を盗む、という行為を。

「そんな悪いこと、私は一度もしたことがありません!」と、胸を張って言える大人がどれくらいいるだろう。

…意外と少ないんじゃね?と、ふぁには思う。

程度の差こそあれ、大なり小なり、ほとんどの子供は通ってきた道だと思う。

お使いのお釣りを、ちょびっとちょろまかすとか。

家の中に落っこちていた百円玉を、こっそり自分のものにしちゃうとか。

…だからって、いきなり五万円はかなりヤバいと思うけど。

なまじバレなかったせいで、ほたるは気が大きくなっていた。

これだけあれば何でも買える。欲しいものは何でも。

それだけで、自分は何でも出来る、という万能感を感じた。

小学校三年生にとって五万円というお金は、そんな恐ろしい魔力があった。

これまでずっと、劣等感を植え付けられてきたほたるにとっては、初めての感覚だった。

その五万円を、お菓子の為だけに使うのなら、まだ可愛いものだった。

だけど、ほたるはここから、段々と道を踏み外していく。

…いや、五万円パクってる時点で、既に踏み外してるけども。

自分でお菓子を買って食べることに、段々と飽き始めていたほたる。

ある日、いつものように駄菓子屋に行くと。

そこに、クラスメイトの男の子が二人、お菓子を選んでいるのを見つけた。

「これにする?」

「あ、これも欲しい!これのチョコ味、美味しいんだよ」

「良いなぁ、俺も欲しい」

などと話をしながら、キャラカード付きのウエハースチョコを前に、興奮した様子。

ほたるはその様子を、そっと眺めていた。

その男の子達は、クラスでも人気者の二人。

つまりは陽キャだった。

根暗で陰キャで、ふぁに以外は友達のいないほたるにとって、雲の上の存在。

クラスメイトだから気軽に声をかければ良いのに、ほたるにはそれが出来なかった。

…しかし。

「あ、駄目だ。今日200円しか持ってないから、買えないんだ」

「ちぇっ…。俺もだ」

どうやら、キャラカード付きウエハースチョコは、予算オーバーだったらしい。

あれって結構高いもんな。

しかも、大抵望んだカードが出ないんだ。これが。

「仕方ない、諦めるか…」

「そうだな…」

キャラカード付きウエハースを、商品棚に戻そうとしたところに。

「あの…それ、僕が買ってあげようか?」

ほたるは、おずおずと歩み寄った。
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