神に選ばれなかった者達 前編
「やめてくれ…。俺は敵じゃない…」
「えっ…えっ…?」
…ようやく、彼女は椅子を振り下ろすのをやめた。
そして、まるで初めて人間を見つけたかのようにこちらを見つめる。
…何だ。俺はバケモノじゃないぞ。
「…落ち着いたか?」
「な…。に、人間…?ゾンビじゃないの…?」
「あぁ…。俺はゾンビじゃない。人間だ」
「…」
女子生徒は、相変わらず信じられたいみたいな顔をしていた。
「何でここに…。人間が…。ゾンビしかいないと思ってたのに…」
「何でここに人間が」か。
それはこっちの台詞だ。
屋上なら誰もいないと思ったのに。何でここに人間がいるんだ。
それに、何より。
「…誰なんだ?お前は」
「えっ…?」
悪夢を見るようになって、しばらく経つが。
目の前にいる、この女子生徒に遭遇したのは初めてだった。
「お前も、『処刑場』の仲間なのか…?」
掲示板には、この少女らしき名前は見つからなかったが。
しかし。
「えっ…。しょ、処刑場って…?何のこと?あなた、誰なの…?」
「…」
…どうやら、何も知らないらしい。
それじゃあ…もしかして…。
「生贄になったのか…?お前も…?」
「…生贄って何のこと?私が毎晩、この酷い悪夢を見るようになったことと、何か関係があるの?あなた、何か知ってるの!?」
死に物狂いといった様子で、彼女は俺に迫ってきた。
その拍子にガシッ、と両肩を掴まれ、さっきしたたかに殴りつけられた左肩がズキッと傷んだ。
「いっ…!」
「あ、ご、ごめんっ…」
そっち、折れてるんだ。触らないでくれ。
ゾンビに食い殺されるよりはマシだが、痛いものは痛い。
「私、ゾンビかと思っちゃって…。また殺されると思って、つい…」
俺をゾンビと勘違いしたのか?
…ゾンビに間違われるとは…。何だか傷つくが。
「いつもなら…いつも屋上で、ゾンビに殺されるの…。痛くて、怖くて…何とか逃げなきゃって…」
「…」
と、彼女は半ばべそをかきながら教えてくれた。
「いつも、屋上には何もないの。でも…今夜は何でか分からないけど、そこに…机と、椅子があって…」
彼女は、屋上に無造作に転がった生徒用の机と。
それから、さっき俺をゾンビと間違えて殴りつけた、血まみれ、粘液まみれの椅子を指差した。
「たまらず…あれで、ゾンビを殴って殺したの…。…怖かった。本当に怖かった…」
「…」
よく見たら、彼女の向こうに。
頭を何度も殴られて、潰されたゾンビの残骸が転がっていた。
…成程。あのゾンビを…この少女が殺したのか。
「えっ…えっ…?」
…ようやく、彼女は椅子を振り下ろすのをやめた。
そして、まるで初めて人間を見つけたかのようにこちらを見つめる。
…何だ。俺はバケモノじゃないぞ。
「…落ち着いたか?」
「な…。に、人間…?ゾンビじゃないの…?」
「あぁ…。俺はゾンビじゃない。人間だ」
「…」
女子生徒は、相変わらず信じられたいみたいな顔をしていた。
「何でここに…。人間が…。ゾンビしかいないと思ってたのに…」
「何でここに人間が」か。
それはこっちの台詞だ。
屋上なら誰もいないと思ったのに。何でここに人間がいるんだ。
それに、何より。
「…誰なんだ?お前は」
「えっ…?」
悪夢を見るようになって、しばらく経つが。
目の前にいる、この女子生徒に遭遇したのは初めてだった。
「お前も、『処刑場』の仲間なのか…?」
掲示板には、この少女らしき名前は見つからなかったが。
しかし。
「えっ…。しょ、処刑場って…?何のこと?あなた、誰なの…?」
「…」
…どうやら、何も知らないらしい。
それじゃあ…もしかして…。
「生贄になったのか…?お前も…?」
「…生贄って何のこと?私が毎晩、この酷い悪夢を見るようになったことと、何か関係があるの?あなた、何か知ってるの!?」
死に物狂いといった様子で、彼女は俺に迫ってきた。
その拍子にガシッ、と両肩を掴まれ、さっきしたたかに殴りつけられた左肩がズキッと傷んだ。
「いっ…!」
「あ、ご、ごめんっ…」
そっち、折れてるんだ。触らないでくれ。
ゾンビに食い殺されるよりはマシだが、痛いものは痛い。
「私、ゾンビかと思っちゃって…。また殺されると思って、つい…」
俺をゾンビと勘違いしたのか?
…ゾンビに間違われるとは…。何だか傷つくが。
「いつもなら…いつも屋上で、ゾンビに殺されるの…。痛くて、怖くて…何とか逃げなきゃって…」
「…」
と、彼女は半ばべそをかきながら教えてくれた。
「いつも、屋上には何もないの。でも…今夜は何でか分からないけど、そこに…机と、椅子があって…」
彼女は、屋上に無造作に転がった生徒用の机と。
それから、さっき俺をゾンビと間違えて殴りつけた、血まみれ、粘液まみれの椅子を指差した。
「たまらず…あれで、ゾンビを殴って殺したの…。…怖かった。本当に怖かった…」
「…」
よく見たら、彼女の向こうに。
頭を何度も殴られて、潰されたゾンビの残骸が転がっていた。
…成程。あのゾンビを…この少女が殺したのか。