神に選ばれなかった者達 前編
価値のあるものとはつまり、誰かに必要とされているということだろう?

非常に残念なことではあるが、俺は誰にも必要とされていない。

俺がいると「都合が良い」ことはあっても、俺「でなければならない」理由はない。

つまり、俺の代わりはいくらでもいる、という訳だ。

それは価値があるとは言えない。
 
…しかし、みらくは納得がいかないらしく。

「君に価値がないなら、私にだってないわよ」

とのこと。

…ふむ。どうやら、何か誤解をしているようだな。

価値のあるない合戦をしても無意味なのは分かっているが、誤解は解いておくに越したことはない。

「…みらく、お前には友達がいるか?」

「え、と、友達?」

「あぁ、友達。…いるか?」

「そりゃあ…いるけど…」

ほう。それは良いことを聞いた。

「家族は?…家族仲は良好か?」

「家族?え…まぁ、普通…?」

そうか。普通か。

「普通」の定義は人によって異なるが。

少なくとも、第一声で「家庭は崩壊している」と言わなかったのだから、

それなりに良好な家庭環境だと、勝手に推測させてもらう。

…少なくとも、他人と暮らしている俺よりは。

「なら、お前はその友達や家族にとって、価値のある人間だということだ」

「…」

友達に代わりはいない。家族にも。

つまりみらくは、その友達にとって、家族にとっても、唯一無二の存在だということだ。

…少し、羨ましい。

「…響也くんにはいないの?そういう…仲良しのお友達…」

「いないな。俺を嫌っている人間ならいるが」

「家族は?お父さんやお母さん…」

「…残念ながら」 

そういうものはもう…俺にはない。

とっくの昔に失われてしまった。

「そんな…。でも、だからって価値がない訳じゃ…」

「…」

「…やめよ、こんな話…。心が苦しくなるよ」

…そうだな。悪かった。

何だか険悪な空気になってしまった…。…手術室で明るい話も、なかなか不釣り合いではあるが。

「よし。何か明るい会話をしよう…。話題を提供してくれ」

「え、えぇ?そんな、急に言われても…。…響也くんが、何か明るい話をしてよ」

俺か?…そうだな。

明るい話…。何かあるだろうか。

「…天体で最も明るいのは太陽だということはよく知られているが、星の中で一番明るいのはおおいぬ座のシリウス、」

「違う。あのね、そうじゃないの」

何故か、真顔で遮られた。

えっ?
< 316 / 431 >

この作品をシェア

pagetop