神に選ばれなかった者達 前編
「…」

目が覚めた時、最初に感じたのは。

世界の眩しさでも明るさでもない。

ただ、全身を苛む、地味な痛みだった。

…地味な痛みって何だよ、って思うかもしれないが。

地味な痛みは地味な痛みだ。

分かるだろうか。こう…全身が、満遍なく筋肉痛になった時、みたいな。

めちゃくちゃ痛い!ってほどじゃないけど、でも気にならないほど痛くない訳でもない。

身体を動かすと、ビリっとした痛みを発する。

背中も頭も腕も足も、とにかくそんな不快な痛み。

それが、この世に生まれたふぁにに対する、世界からの祝福だった。

「…あ…?」

…何だ、ここは。

何処なんだ?一体…。

ムカつく全身の痛みに耐えながら、肘を曲げて起き上がろうとしたのだが。

ふぁには、起き上がることすら出来なかった。

痛みのせいではない。

腕から足まで、ベルトのようなものでぐるぐる巻きにされていたからだ。

動きたくても、物理的に動けない。

どころか、気をつけ!みたいな格好のまま、右も左も向けない。

…何これ。何の罰ゲーム?

この世に生まれたと思ったら、芋虫状態なんだが?

冗談じゃないと思って、懸命に身を捩ってみたが。

容赦なくガッチリと拘束されているせいで、どうしても抜け出せない。

何なんだよ。囚人でももうちょっと自由あるだろ。

ふぁにが何をしたって言うんだ。…まだこの世に生まれたばかりなのに。

…すると。

「…あら?何、起きたの?」

「…あ…?」

部屋の中に、何者かが入ってきた。

くたびれたナース服を着た、中年の女性看護師だった。

彼女はうんざりしたような顔で、こちらを見下ろしていた。

…何だよ、おい。

それが初対面の相手に対する態度か?

「正気なの?もう馬鹿なことしないでしょうね?」

…は…?

目の前のおばさん看護師(←失礼)が、何を言っているのか分からなかった。

…いや、このおばさんの方が失礼じゃね?

初対面の相手に、「あなたは正気ですか?」って聞くか?普通。

ふぁにが何をしたって言うんだよ。

たった今この世に生まれたばかりで、まだ何にもしてないのに。

むしろ、生まれて間もないふぁにを、全身ぐるぐる巻きにする方が正気なのか?

と、逆にこちらが聞きたいくらいだった。

しかし、おばさん看護師はあくまで真面目だった。

「ついさっき、あんたの家に連絡したわよ」

「…え…」

…家?ふぁにの?

…何処?

「母親だか父親だかが、迎えに来るそうよ。それまでに頭を冷やしなさい」

と言って、おばさん看護師は溜め息をつき。

面倒臭そうに、部屋から出ていった。
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