神に選ばれなかった者達 前編
…ゾンビに襲われる、謎の学校を夢に見るようになって。

そこで、新たに生贄となった萩原響也さんという人と知り合って。

それ以来私達は、毎晩、学校のゴミ捨て場に集まるようになった。

さながら不良生徒みたいだけど、ここが現状、唯一の安全地帯なのだから仕方ない。

そのゴミ捨て場で私達は、ゾンビ軍団を一掃する方法について、毎晩議論していた。




「やっぱり、一体ずつ倒すのは現実的じゃないみたいだな」

そう言ったのは、私達の作戦参謀的存在。

ハンドルネーム天使ちゃんこと、佐乱李優さんだ。

「倒しても倒しても、うじゃうじゃ湧いてくるもんね」

「さながらゴキブリみたいなもんだ。めんどくせ」

更に、久留衣萌音さんと妹尾ふぁにさんが同意した。

ゴキブリか…。良い例えだな。

その気持ちはよく分かる。私にも覚えがあるから。

ゴキブリってほんと、倒しても倒しても出てくるよね。

一匹いたら10匹はいると思え、ってよく言われるように。

ゾンビの方も、一体ずつ、ちまちまと倒してたんじゃ埒が明かない。

「各個撃破を狙うより、作戦を立てて、一気に一網打尽にして方が良さそうだな」

「でも、どうやって?」

「…それは悩みどころだな」

そんな方法があるなら、とっくにやってる、と言いたいよね。

果たして、言葉の通じないゾンビ相手に。

どうやって、一箇所に集まってもらえば良いのか。

それに、問題は更にある。

「仮に一箇所に集まったとして、どうやって一網打尽にするんだ?」

と、お兄ちゃんが尋ねた。

…そうだよね。

萌音さんもお兄ちゃんもふぁにさんも、それに新しく加わった響也さんも。

敵をまとめて倒せる武器じゃない。どっちかと言うと、一人ずつ倒すのに向いた、近接武器ばかりなのだ。

私はと言うと…言うまでもないし。

「そうだな…。それも考えないとな…」

「いっそ、落とし穴でも仕掛けるか?」

ふぁにさんが提案した。

落とし穴か…。…古典的だね。

でも、ゾンビ相手には有効かもしれない。

「ほら、落とし穴の下に、槍みたいに尖らせた木の枝を何本も突き刺しておいて」

「それで倒せるのか?」

「さぁ。知らん」

「まぁ…やってやれなくはない…か…?」

「少なくとも、試してみる価値はあるんじゃないか?」

…そうだね。

他に代案がないなら、今自分達に出来る最大限のことをする。

仮に失敗しても、その失敗から学びを得られる。

そうやって、少しずつ、一晩ずつ、勝利に近づいていく。

それが、私達のいつものやり方だった。

「響也。スコップとかシャベルって、この学校にあるか?」

「そうだな…多分、用具入れにあるはずだ」

響也さんは昼間、この学校に通っているそうで。

学校の地理については、誰よりもよく知っている。

私達にとっては、非常に頼もしい存在だ。

「案内してくれるか」

「分かった」

そこで私達は、響也さんについて、用具入れに向かった。
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