彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「佳穂。君がだめだと思っていることはだめじゃない。僕が証明してやる。佳穂、僕と結婚しよう」

 名前を呼んで先生は私の頬を囲んで目を見て言ってくれた。夢を見ているのかと思うほど嬉しかった。

 涙が出た。先生は嗚咽する私をそっと胸の中に抱き寄せた。シトラスの香りがした。

 優しく頭を撫でてくれた。

「泣くな。君の涙は僕を昔に引き戻す。君を泣かせないために側へ連れて来たのに、これじゃだめだな……」

 そう言って私の顔を上げておでこにキスをした。

「あ……」

 私はじっと先生の目を見あげた。すると、先生はふっと笑った。

 その微笑みが私の中の壁を壊した。

 ああ、私は先生が好きになってしまった。恋愛してはいけないという自分のルールが音を立てて壊れていく。

 先生に惹かれている自分を否定できない。

 そして先生があの時の言葉をくれた人だと分かった今、余計に後戻りできなくなっていた。
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