彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 先生は私のおでこをピンッと軽くはじいた。

「佳穂。大丈夫なのは君だけで、あいつが大丈夫か僕も正直約束できない。ほだされるなよ。仕事のこともそうだ。君は僕の婚約者だ」

 そう言うと私をぎゅっと抱き寄せた。

「帰国したら、覚悟しろよ」

「え?」

「出張前で君のことの解決や仕事が忙しすぎて余裕がなかっただけだ。僕は君との結婚を諦めない。絶対だ」

 すると端正な顔が近づいてきて突然唇を奪われた。

「ん……ん……あ……」

 先生のキスは首筋にうつった。顔をあげた先生は私の目を見てふっと息をのんだ。そして大きな手で私のその目を覆った。

「そのとろけた目を見ると理性が崩壊する。これ以上進むと君を連れて行きたくなる。この続きは帰国後の楽しみにとっておく」

「先生……」

 そう言うと彼は解放してくれた。

 先生は次の日の昼の便で旅立って行った。
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