彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

祖父の借金

 佐々木さんと池田さんは黒羽先生の案件をメールでやり取りしながら進めていた。私は基本的に川口先生の事務所にいて、何かあれば電話で佐々木さん達とやりとりをしていた。

「水世ちゃん、その後、櫂と連絡取れた?」

「ほとんど返事がないんです」

「そう。なんかあっち大変らしいよ。今日噂を耳にした」

 先生はあちらの経済雑誌に顧問会社の社長と一緒に掲載されてしまった。投資顧問会社の危機を救ったとか書かれていたそうだ。あちらの危機を救ったのはいいが、こちらは放り投げられていて大変だった。

「水世。連絡できなくてすまなかった」

「ご活躍されているようですね。さすがは黒羽先生。おかげさまでこちらは適当に進めています。あとで怒らないで下さいね」

「怒っているのは水世だけじゃない、さっき電話したあのふたりは相当怒ってた。返事が遅れて本当にすまない。いや、仕事だけじゃなくて色々あって……追いかけまわされて大変なんだ」

「雑誌に載るくらいですからマスコミにでも追いかけられてるんですか?」

「こちらの会社宛てに僕へ仕事を依頼をしてくる日本人が増えて、本来の仕事をする時間が取れないんだ」

「え?」

 それはまずいかもしれない。既読スルーも許してあげようという気になってきた。

「君は大丈夫か?何もないか?」

「私自身は何もありません。」

「おい、うちの事務所へほとんど顔を見せていないそうだな。池田から聞いたぞ」

「だって、先生は全くお返事もくれないし、事務所に戻ると先生のこととか色々思い出すから嫌なんです」
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