先生の金魚
職員室まで走った。

胃が揺れて本当に吐いてしまいそうだった。

廊下から職員室の中を覗いたらせんせーと美人教師が笑い合っているのが見える。

喉元まで出かかる嘔吐感を飲み込んで早歩きでせんせー達のほうに向かった。

「せんせー!」

「時枝?」

「ちょっと外しますねぇ」

美人教師はデスクに置いていた薄ピンクのハンカチを持って立ち上がった。

さすがだ。
美人な大人は余裕がある。

邪魔されようが何をされたって子どもに負けるわけないって。

「どうした?」

「サヨ…紅さんが」

名前を出しただけでメグはなんにも言っていないのにせんせーはチェアが床を擦って鳴るほどの勢いで立ち上がってどこかに向かおうとした。

仮に本当にサヨちゃんの一大事だとして、闇雲に勢いで飛び出すよりもきちんと話を聞いて行動したほうが絶対に最小限で済むのに。

恋だ、って思った。

この衝動は。

メグとおんなじ恋だ。
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