先生の金魚
生徒指導室の前はシン、と静まり返っている。

保健室、家庭科室、購買部なんかが周りにはあるけれど
保健室には「外出中」の札、他の教室も使われていないし
購買部はお弁当の時間が終わったら閉まってしまう。

一階の教室が使われていない時間はなんだか照明も暗く見える。

十分くらいしたらせんせーはすぐに来た。

「ごめん。待たせたな」

「全然」

本当にデートの待ち合わせみたいでドキドキする。

しかも今から、校則やなんやかんやに怯えることもなく正当に二人っきりになれるんだ。

最高の気分。

生徒指導室の間取りはメグ達の教室よりも狭かった。

会議室で使うくらいの長机が二台向かい合わせに並んでいて、パイプ椅子が六脚。

「座って」

せんせーに言われてドアから一番近い椅子に座った。
せんせーはその向かい側に座った。

「お前だろ」

単刀直入にそう言ったせんせーの言葉が金魚を指していることはすぐに分かった。

ナチュラルに口角が上がっていく。
奥歯を噛み締めても止まれそうにない。
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