【連載中】エリート調香師は、初心な新妻を口説き落としたい。
時計が十時を過ぎた頃、心彩は眠気を感じた。
昨日は結婚式で、その後この家に来て、色々なことがありすぎた。疲れが出てきたのだろう。
夜が更けて、心彩が先に寝室へ向かった。
おやすみなさい、とメモに書いてテーブルに置こうとすると、玲央が先に気づいて顔を上げた。
心彩が小さく手を振ると、玲央はまた、ほんのわずかに目の端を和らげた。
口は動かなかった。でも、それで十分だと心彩は思った。
おやすみなさい、という言葉が、その目の動きの中にあった気がしたから。
寝室に入り、ベッドに潜り込んで、心彩は今日一日を振り返った。
言葉を使わないかわりに、行動が丁寧だ。
心彩は、そういう人のことは信じられると思っている。言葉は簡単に嘘をつける。でも行動は、嘘をつきにくい。
心彩は枕の横に小瓶を置き、そっと蓋を開けて沈丁花の香りを楽しんでからベッドに横になった。


