『Special Edition③』


「2次会行く?」
「私は無理~」
「そのお腹じゃぁな」

 披露宴が終わり、16時過ぎ。
 佑人が茜たちに声をかけて来た。

「私も帰る。明日、早朝のフライトが入ってて」
「そっか」
「佑人は暫く日本にいるの?」
「いや、明後日には帰る予定」
「そうなんだぁ」

 お茶でもできたらいいんだろうけど、仕事もあるから難しそう。

「あっ、朔くん来た。佑人、ごめん。私先に帰るね~」
「おぅ。産まれたら、連絡して」
「はーい。茜、また連絡するね~」
「うん」

 お腹の大きい千奈を心配し迎えに来た朔也さんは、千奈の腰に手を添え、茜たちに会釈した。

「朔也さん、安全運転でね」
「分かってるよ、茜ちゃん。渡瀬くん、お久しぶり」
「ご懐妊、おめでとうございます」
「ありがとうございます。じゃあ、俺らはこれで」

 飲み会の度に迎えに来ていた朔也さんだから、佑人とも顔見知り。
 最初の頃はイケメンの佑人たちを牽制していた朔也さんだったけど、今はもうそんな素振りも見せない。

 夫となり、赤ちゃんができたからなのか、だいぶ穏やかになったように感じた。

「千奈の旦那、だいぶ丸くなったな」
「元々、優しい人だよ。佑人と隆がイケメンすぎて、心配だっただけだから」
「あ~、あいつの眼、結構ジェラシービーム出てたもんな」

 1年くらいしか経ってないのに、もう何年も前のことのように思える。

「先生が迎えに来るのか?」
「うん。ってか、もう先生じゃないけどね」
「……あっ」

 結婚式を欠席した佑人には、『結婚しました』という年賀状を送った。
 挙式の時にはもう教師は退職していたけれど、私たちにとっては『先生』の方がイメージが強い。

「茜も。幸せそうで安心した」
「……ありがと」
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