『Special Edition③』
少し遅れてやって来た佑人。
ロングコートを脱ぐ間もなく少し慌ててる姿に、意外な一面を垣間見た。
いつも大らかで余裕のある姿しか見ていなかったから。
「ごめん、コート預けて来るな」
「うん」
あの逗子以来なのに、メールで何度か会話してるからかな。
よそよそしさは感じられなかった。
「千奈、少し座ろうか。お腹張らない?」
「張ってはないけど、腰が辛いかな」
「フリードリンクらしいから、何か貰って休もう」
「うん」
挙式までの間、広々としたロビーでウェルカムドンリンクを頂く。
佑人は他の同級生たちと楽しそうに会話しながら、時折チラッと視線を寄こして来る。
「佑人、相変わらず茜のこと見てるね~」
「……見てるっていうより、話しかけるタイミングを見計らってる気がするけど」
最初の挨拶以来、佑人と会話していない。
交友関係の多い隆は、身内よりも友人重視の結婚式にしたようだ。
同級生や職場関連の人が多く、アットホームな雰囲気が漂ってくる。
*
美しい音色に包まれ、参列者の席から新郎新婦を祝う。
森の中に佇んでいるような雰囲気を味わわせてくれる。
ここが都会のど真ん中ということを忘れてしまうほど、周りを木々に覆われているチャペルは、純白のドレスとタキシードがよく映える。
新婦の恵奈さんは、隆の会社のインテリアプランナーらしくて、3歳年上らしい。
高校時代の同級生たちが話をしているのが聞こえて来た。
「隆、幸せそうだね」
「うん」
千奈に向けていた眼差しよりも、もっと溺愛しているのが分かる。
両想いだからだよね。
隆の指が触れる度に、恵奈さんは照れながら嬉しそうな表情を浮かべ、それを目にしている隆が、物凄く幸せに見えた。