『Special Edition③』

 少し遅れてやって来た佑人。
 ロングコートを脱ぐ間もなく少し慌ててる姿に、意外な一面を垣間見た。
 いつも大らかで余裕のある姿しか見ていなかったから。

「ごめん、コート預けて来るな」
「うん」

 あの逗子以来なのに、メールで何度か会話してるからかな。
 よそよそしさは感じられなかった。

「千奈、少し座ろうか。お腹張らない?」
「張ってはないけど、腰が辛いかな」
「フリードリンクらしいから、何か貰って休もう」
「うん」

 挙式までの間、広々としたロビーでウェルカムドンリンクを頂く。
 佑人は他の同級生たちと楽しそうに会話しながら、時折チラッと視線を寄こして来る。

「佑人、相変わらず茜のこと見てるね~」
「……見てるっていうより、話しかけるタイミングを見計らってる気がするけど」

 最初の挨拶以来、佑人と会話していない。
 交友関係の多い隆は、身内よりも友人重視の結婚式にしたようだ。
 同級生や職場関連の人が多く、アットホームな雰囲気が漂ってくる。



 美しい音色に包まれ、参列者の席から新郎新婦を祝う。

 森の中に佇んでいるような雰囲気を味わわせてくれる。
 ここが都会のど真ん中ということを忘れてしまうほど、周りを木々に覆われているチャペルは、純白のドレスとタキシードがよく映える。

 新婦の恵奈さんは、隆の会社のインテリアプランナーらしくて、3歳年上らしい。
 高校時代の同級生たちが話をしているのが聞こえて来た。

「隆、幸せそうだね」
「うん」

 千奈に向けていた眼差しよりも、もっと溺愛しているのが分かる。
 両想いだからだよね。
 隆の指が触れる度に、恵奈さんは照れながら嬉しそうな表情を浮かべ、それを目にしている隆が、物凄く幸せに見えた。

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