🕊 平和への願い 🕊 【新編集版】  『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて。
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「申し訳ありません」

 モルドバでナターシャの動きを監視していた若い探偵が青ざめた声を出した。
 ちょっと目を離した(すき)にオデーサへ出発していたのだという。

「なんで追いかけなかったんだ!」

 ミハイルが強い口調で詰め寄ると、「いや、ウクライナにはちょっと……」とこれ以上は自分の仕事ではないというように首を振った。

「情けない」

 同僚を一瞥(いちべつ)したミハイルが顔を向けて済まなさそうな目で見つめたが、謝られても仕方がなかった。
 そんなことより、これからどうするかなのだ。

「オデーサに行ったというのは間違いないのですね」

 若い探偵は無言で頷いてから、ミハイルを上目遣いで見た。
 職を失う危険を感じ取ったのかもしれなかった。

「で、オデーサのどこへ行ったのですか?」

「病院だと思います」

 主に薬や医療品を運ぶトラックに同乗したので間違いないという。

「それは定期的に運んでいるのですか?」

 頷いたが、声は発しなかった。

「次の便はいつ出発するかわかりますか?」

「いえ、そこまでは……」

「なんでそんなことくらいわからないんだ」

 ミハイルが胸ぐらを掴むような声を発すると、「いや、はい、その、すみません……」と消え入るような声になった。
 しかし、ミハイルは許さなかった。
「早く調べろ!」とケツに蹴りを入れるような声を発したのだ。

「わかりました」

 怯えた表情になった若い探偵は慌てて走り出した。


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