🕊 平和への願い 🕊 【新編集版】  『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて。
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 眠れない夜を過ごしたナターシャだったが、やるべきことをやらなければならない、彼の分まで頑張らなければならない、と重い心と体に鞭打って宿舎から外に出た。

 でも、そのまま真っすぐボランティア会場に向かおうという気になれず、遠回りすることにした。
 無性に海が見たくなったのだ。
 それは、心の傷を波で洗い流してもらいたいという欲求からくるものかもしれなかった。

 海岸に着くと、目の前には美しい海とビーチが広がっていた。
 しかし、そこは立ち入り禁止の場所になっていた。
 ロシア軍の上陸を阻止するために海岸一帯に地雷が埋められているのだ。
 ドクロのマークの立て看板が睨んでいるようで不気味だった。

 今年は海水浴もできないと思うと気持ちが沈んだ。
 去年までは多くの市民や観光客が色鮮やかな水着で日光浴をしたり水しぶきを上げていたはずなのだ。
 しかし、そんな平和な光景は奪い去られた。
 黒海はロシア軍に支配され、軍艦や潜水艦による攻撃が行われているだけでなく、機雷によって航行の自由が削がれているのだ。
 戦の海となって人を寄せ付けない場所に変わってしまったのだ。

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