🕊 平和への願い 🕊 【新編集版】 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』にリスペクトを込めて。
6
路地を曲がるとその店が見えた。
明かりは消えていなかった。営業しているようだ。
しかし、ドアを開けて中に入ると、ガランとしていて、ロシア人の店主がぽつんと座っているだけだった。
それでも、こちらの顔を見るなり表情が変わって、「いらっしゃい」と笑みが浮かんだ。
今日初めての客だと言った。
最近はずっと閑古鳥が鳴いているのだという。
日本人はまったく来なくなったし、警戒しているためか、ロシア人も近寄らなくなったという。
「大変でしたね」と慰めながら席に座った。
思い出の席だった。
妻と隣同士になったカウンター席。
ここから始まったのだ。
そして、プロポーズもこの席でした。
彼女の指にリングをはめると、満席から拍手が沸き起こった。
幸せ絶頂の瞬間だった。
しかし、その席に妻はいない。
遥か彼方のオデーサで行方がわからないままなのだ。
何も頼んでいないのに『ザクースカ』が出てきた。
前菜の盛り合わせだ。
久し振りの予約が入って喜んでいたら、急にキャンセルされて困っていたのだという。
だからタダでいいという。
そうもいかないと思ったが、払おうとしても受け取らないのはわかっていたので、素直に甘えることにした。
ビールは軽い度数のものにした。
ロシア産のペールビールだ。
ちょっと軽めの味わいが飲みやすく、ザクースカとの相性もばっちりだった。
店主と飲み交わしながらロシア語で話していると、ふとナターシャと初めて言葉を交わした時のことを思い出した。
あの日、勇気を出して話しかけると、彼女は目を丸くして、「こんなに上手にロシア語を話す日本人に初めて会いました」と言ったのだ。
それが切っ掛けとなってこの店で食事をするようになり、関係が深まっていった。
正にロシア語が取り持つ縁だった。
「ロシア語に乾杯」
思わず声が出て、店主のグラスにカチンと合わせた。
店主は、ん? というように目を見開いたが、なんでもないというふうに首を振った時、いきなり言葉が降りてきた。
それは、探し求めていたハンドルネームだった。
路地を曲がるとその店が見えた。
明かりは消えていなかった。営業しているようだ。
しかし、ドアを開けて中に入ると、ガランとしていて、ロシア人の店主がぽつんと座っているだけだった。
それでも、こちらの顔を見るなり表情が変わって、「いらっしゃい」と笑みが浮かんだ。
今日初めての客だと言った。
最近はずっと閑古鳥が鳴いているのだという。
日本人はまったく来なくなったし、警戒しているためか、ロシア人も近寄らなくなったという。
「大変でしたね」と慰めながら席に座った。
思い出の席だった。
妻と隣同士になったカウンター席。
ここから始まったのだ。
そして、プロポーズもこの席でした。
彼女の指にリングをはめると、満席から拍手が沸き起こった。
幸せ絶頂の瞬間だった。
しかし、その席に妻はいない。
遥か彼方のオデーサで行方がわからないままなのだ。
何も頼んでいないのに『ザクースカ』が出てきた。
前菜の盛り合わせだ。
久し振りの予約が入って喜んでいたら、急にキャンセルされて困っていたのだという。
だからタダでいいという。
そうもいかないと思ったが、払おうとしても受け取らないのはわかっていたので、素直に甘えることにした。
ビールは軽い度数のものにした。
ロシア産のペールビールだ。
ちょっと軽めの味わいが飲みやすく、ザクースカとの相性もばっちりだった。
店主と飲み交わしながらロシア語で話していると、ふとナターシャと初めて言葉を交わした時のことを思い出した。
あの日、勇気を出して話しかけると、彼女は目を丸くして、「こんなに上手にロシア語を話す日本人に初めて会いました」と言ったのだ。
それが切っ掛けとなってこの店で食事をするようになり、関係が深まっていった。
正にロシア語が取り持つ縁だった。
「ロシア語に乾杯」
思わず声が出て、店主のグラスにカチンと合わせた。
店主は、ん? というように目を見開いたが、なんでもないというふうに首を振った時、いきなり言葉が降りてきた。
それは、探し求めていたハンドルネームだった。