心が解けていく

地獄の洗礼





三コール、四コール、五コール。


もしこの電話が今かけるべきではないのなら、出るまで待つわけにはいかない。




一旦切ろう。




「…っもしもし、」




余計な迷惑はかけたくないし、携帯を耳から離して切ろうとすると、小さく弱い声が聞こえた。


離した携帯を、急いでまた耳に戻す。





「もしもし?」


「うん、もしもし」


「ごめんなさい。今、電話しない方が良いかなって思ったんですけど…。迷惑だったら切ります」


「大丈夫だよ。迷惑じゃない」





仕事中に電話してしまったのか、小さい声は変わらない。



律くんの声が聞きたくて、真実を知りたくて電話した。



でも律くんの声を聞いたら、次の言葉が出てこなくて、自分から電話しておいて長く続いた無言の時間。


電話の第一声を聞いたら、喉の奥で色々な何かが詰まってしまった。




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