心が解けていく





午後からの貴重な一人の時間を、マッサージに使うらしい。


予約枠が一つ空いていたから、今から行くそうだ。




旦那さんとの惚気話は別日にして、駅に着くと手を軽く上げて挨拶を済ませる部長に深くお辞儀をして、見送る。


エスカレーターに乗る手前、突然足を止めるとまた私の方へ小走りで戻ってきた。





「一つ言い忘れた。待ってるだけじゃ、良いことないよ。私が旦那にしたみたいに、藤波さんも自分から動いてみると、案外悩みがどうでも良いことだったって気づけるから」




今度こそエスカレーターに乗って、私とは違うホームに消えていった。




律くんに連絡はしたけど、まだ返ってきていない。



あの報道の意味は何だろうか。

律くんは無事だろうか。



そればかり考えて、返事を待つだけ。


自分から動いたら、何か良いことが起こるかな。



ずっと避けていた通話ボタンをようやく押して、携帯を耳に当てた。



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