心が解けていく
「久しぶりやな」
心を許してしまう人懐っこい笑顔を向けられると、奥の個室を指さされた。
あの部屋に、律くんが居るということか。
「お茶持って行くわ」
「ありがとうございます」
閉まっている扉の一つを優しく、人差し指の第二関節で二回小突くと、返事はなく扉が数センチ開いた。
扉の隙間から律くんが顔を覗かせる。
「誰も居ない?」
「はい。大将と私だけです」
ガバッと開くと、手招きされる。
警戒がすごい。
折り重なって来る記者の存在は、テレビの中の話だと思っていたけど、本当みたい。
「ごめんね。せっかくの休みなのに」
「休みの日に律くんに会えて、嬉しいです」
「うん。俺も茜音ちゃんの顔が見れて、嬉しい。元気?」
「はい。それなりに」