深瀬くんが甘すぎる


「…そうだよ、この前言ってた彼女はひまりのこと」


ーーえ、今なんて?
耳から入ってきた言葉の意味がわからなくて、一瞬思考回路がショートする。

わけがわからなくて深瀬くんの顔を呆然と見つめていると、私の視線を受け止めた深瀬くんは「ね、ひまり」とふわりとした柔らかい笑みを浮かべた。

教室ではみたことのない、花開くような人懐っこい笑顔。整った容姿と相まって、とんでもない破壊力。

唐突な笑顔に固まっていると、さりげない仕草で深瀬くんの手が私の肩を引き寄せた。一瞬で縮まった距離に、ドキッと心臓が跳ねる。

肩に触れている手は、私の手よりもずっと大きくて筋張っている。明らかに自分のとは違う、男子の手の感触に勝手に鼓動が速くなる。


いったい深瀬くんは、どういうつもりなの。


真意がわからなくてその横顔を見上げる。すると深瀬くんは少し身をかがめて、私の耳に口元を寄せた。
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