少女と過保護ーズ!!続
「空」

「~~~っっ」


至近距離で呼ばれ、布団が引き下ろされ、今度こそしっかりと竜希さんと目があった。

キリッとした切れ長の瞳が柔らかく細まり、笑ってくれる。


っっっ!

……泣きそうだ。

本当に会いたかった人がすぐ近くに居て、自分を……自分だけを見てくれてる。


「やっと顔が見れたって、ああ……。本当、顔が真っ赤で目が潤んでんじゃねぇか。しんどいか?」


冷えピタ貼るか?と差し出された冷えピタ。

何故に普段絶対使わない冷えピタなるものを持ってるの?


「ん?ああ、チビがな。怪我のせいか、最近よく熱を出すからな」


ズキン……。


「……熱はない……から大丈夫。それより……竜っ竜希さ……」

「ん?」

「……なんでココに?」


やっと声が出た。


「この間世話になったから、お礼をと思ってコレを」


スッと差し出された物をオズオズと受け取るとソレは

クリスマスパーティの招待状。

……クリスマスパーティ?

この一月に?

おもわず首を傾げれば、"ああ"と気付いた竜希さんが説明してくれた。


「約束してたんだ、チビと。だけどチビが拐われてソレどころじゃなくなって……」


……そうかアレはクリスマスだった。

これもやっぱり"チビ姫"のためーー。

全部、全部、チビ姫のためーー。

日付は1月18日……。

行けないなぁ……。

行けない。


「ごめんなさい。この日は用事が……っっ」


あるの。とまで言えなかった。


だって用事なんてない。


ただ……竜希さんと"チビ姫"の仲の良い姿を見たくない。

ポロっと涙が零れた。


「っっそんなにしんどかったか‼悪いっ‼今すぐりりちゃん呼んでやるからっ‼」


出ていこうとする竜希さんに、反射的に手が出た。

服の裾を掴んで引き留めてしまう。


「空?」


困惑顔の竜希さん。


ごめんなさい。

ごめんなさい。

でも


「……大……大丈夫だから、もう少しだけ……」


もう少しだけ一緒にーー。


「しんどい時は心細いよな。ん。お前が眠るまで側にいる」


大きな手に自分の手が包まれ、竜希さんが戻ってきてくれる。

優しいなぁ……。

嬉しいのに涙が止まらないー。


そんなあたしを竜希さんはただ黙って、手を繋いだまま、開いた手で頭を撫で続けてくれた。


ーーーー


「空」

「……りりちゃん」


いつの間にか眠ってしまったらしい。

目を開けた時に目の前に居たのは、りりちゃんだった。

竜希さんはの姿はもうなかった。

眠るまでって約束だったもんねー。

まだ感触の残る手を握りしめる。


こんなにも苦しい。


「あんたがね、元気になったらまた来るって」

「え!?」


どうしてー!?


「あんたの笑った顔が見たいらしいわよ?」


ニッコリ笑うりりちゃん。

あたしの笑った顔を??


竜希さん。

竜希さん。

ほんの少しでも、あたしは貴方の心に居ますかー?

さっきのことで、忘れることなんて出来なくなった。

もっともっと、貴方を好きになった。


ねぇ、竜希さん。

あたしーー頑張ってもいいですか?
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