騙すなら墓場まで



 他人から見れば、ずいぶんと回り道をしてきたように見えるだろう。

 相手を自分のエゴで騙し、自分の気持ちさえ騙して息をしていた。何かがかけ違っていたら、私たちは一生騙し合いをしていたに違いない。



 それでも私たちにはこれが、最短の距離だった。



「その」

「はい」

「子どもの計画はどうする」

「子ども……」


 伊月さんと私の子。

 男の子だったら伊月さんみたいに警察官を目指すのかもしれない。

 女の子だったらオペラを好きになってくれたら嬉しい。

 膨らむ想像のままに「すぐにでもほしいです」と返せば、伊月さんは低く唸った。


「しばらく二人だけの生活を楽しみたい……」

「うーん……じゃあ、一年だけそうしましょう」


 一年経つ頃に産婦人科で相談するかどうか話していると、ドアが勢いよく開かれた。


「警視正! 時間間に合いませんよ!……」


 植田さんと私たちが固まった数秒後、鬼の形相で追いかけっこを始める伊月さんを、私は笑いながら追いかけるのだった。



〈了〉
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青春・友情125ページ

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