騙すなら墓場まで



 私が深く頭を下げると、正恵さんは大慌てをして伊月さんには叱られてしまった。


「君はこの部屋の主になるんだから、もっと堂々としていろ」

「奥様、これではどちらが主人かわかりませんよ」


 本当にどうなっているんだろう。伊月さんとしては“仇の男と無理やり結婚させた”だけで満足なのだろうか?


「これから気をつけます」


 ひとまずその場を収めると、正恵さんが準備してくれた夕食を食べることになった。さっきから美味しそうな匂いがすると思っていたらそういうことか。


「俺はいい。まだ仕事がある」


 遅くなるから夕飯はそのままにしておいてくれ。

 伊月さんは手短かに伝えると、部屋には上がらずそのまま廊下を逆戻りしていった。正恵さんにも、もちろん私にも口を挟む暇を与えないまま。


「呆れた……! 新妻より仕事を取るなんて……!」


 口を半開きにしていた正恵さんが我に返り、背中さえ見えなくなった伊月さんに悪態を吐く。


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