騙すなら墓場まで



「お仕事がお仕事ですし、仕方ありませんよ」


 私がとにかく部屋に上がるよう促すと、正恵さんは渋々といった様子で私を案内してくれた。


「そりゃあ、警視正なんて役職ですからね。お忙しいのはわかってますよ、ええ、わかってますとも」


 警視正! 私は驚いてそう口にしそうになるのを堪えた。先ほどの挨拶で、伊月さんのお養父さんが副総監なのはチラッと聞いていたが、伊月さん本人の肩書きもまた仰々しいものだった。

 ……私、何一つ伊月さんについて知らないんだ。

 その事実に胸がチクリと痛む。


「すごく綺麗に整頓なさっているんですね」


 辺りを軽く見渡しながら言ってみた。どこもかしこもちり一つ見当たらない。モデルルームのような部屋だ。


「旦那様はほとんど帰っていらっしゃらないんですよ。そのせいです」

「本当に激務ですね」

「しょっちゅう職場に缶詰めになってましてね、あたしが洗濯物とか取りに行くついでに通う意味がないって文句言ってるんですけど、全く効果ないんです」


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