騙すなら墓場まで
「ちゃんと食べて、寝てください」
自分よりも彼のほうがよほど危険な状態に思えて、思わず口を挟んでしまった。お節介な真似をしてしまったと後悔したが、口に出したらもう戻らない。
「……君はどうしてそう……自分は二の次なんだ……」
伊月さんは瞬いたあとに片手で目を覆った。顔も背けてしまい、呆れられてしまったなと目を伏せた。
呆れられてもしょうがない。それだけのことをしてしまったんだから。
「……身体は痛むか?」
「はい、少しだけ」
「何があったかは……覚えてるか?」
「先ほど思い出しました」
そうだ。私はあれから出ていく準備を少しずつ進めて、正恵さんが帰ってから離婚届をテーブルに置いて出ていったのだ。
夜道を伊月さんの職場から反対方向へと進んだ。これからどこで働けばいいのか。どこで暮らすつもりなのかも決めていなかったけど、とにかく一歩でも遠くへ行きたかった。