屋上にて、君へ
「ギャァィィィイイ8時ぃ!!?」


山田家に響き渡る断末魔のようなバッドモーニング。

目覚まし時計4個セットしても起きれないあたしの聴覚は、一度精密検査をお願いしたい。



「千夏ご飯は?」

「あー、いらなーい」

慌ただしく髪にブラシを通すあたしに、ママはため息をわざとらしく吐いた。


「まったくこの子は、毎朝毎朝騒がしいんだから……」


「行ってきまーす! あっ、ママー?」


「はいはい? 何かしら」

「今日、梨佳とシオたんがうちに勉強しに来るから」

「あら、じゃあぶんぶん堂の抹茶カステラ買ってきてあげる」

「やったぁ!」


ぶんぶん堂の抹茶カステラ。

先月ハマって食べ過ぎて、鼻血を出したカステラ……これまた絶品なのです!


あたし、ぶんぶん堂の抹茶カステラがあれば、男なんていらない。


でも『あの人』が持ってきてくれたら……いらなくもないかも。

なーんて!


「千夏時間やばいわよ。ほら、何ニヤニヤしてんの」

「うわっ! もうこんな時間。いっ、行ってきまーす」


あたしは春に新調したばかりのローファーを履くと、そのまま勢いよく玄関を飛び出した。
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