神に選ばれなかった者達 後編
萌音も、そんな仮初めの、寄せ集め家族の一員に過ぎない。

萌音がこの家に来たのは、およそ十年前の6歳の頃。

実の親と一緒に暮らせない理由が出来たせいで、この家に引き取られた。

以来、萌音はずっと、この家で暮らしている。

この家にいる子供達は、皆そうだ。

実の両親が死んでしまった、あるいは行方が分からなくなった。

または、萌音と同じように、親はいるけれど一緒に暮らせない理由があって、この家に引き取られてきた子もいる。

…まぁ、何にせよ。

6歳で親元から離れた萌音にとっては、自分の血の繋がった家族と一緒に暮らす、というのがどういう感覚なのか、もう分からない。

実家にいられないのだから、仕方がない。

他人の家だとしても、暮らせる場所があるのだから、恵まれていると思おう。

そんな風に、割り切って考えられるようになった。

これも、十年という、決して短くない期間で萌音が学んだことの一つだ。

…さぁ、お喋りはこのくらいにして。

そろそろ起きて、学校に行く支度をするとしよう。

萌音は自分の寝ていたお布団を片付けて、学校の制服に着替えた。

高校の制服である。

その制服に着替えて、萌音は女の子部屋を出て、一階に降りる為に階段に向かった。

親元から離れているのに、高校にまで通わせてもらっているだけで、大変な幸福である。

我が家、久留衣家のパパとママは、とても教育熱心な人で。

お金のせいで学業を諦めて欲しくないからと、身銭を切ってまで、常に子供達に最高の教育を受けさせようと努力してくれているようだった。

だから、久留衣家にいる子供達は、義務教育である中学校を卒業した後も。

高校にも当たり前に通わせてもらっているし、一番上のお兄さんは現役の大学生である。

それに、萌音と同い年の女の子も、公立じゃなくて私立の名門女子校に通っている。

世間でよく見られる偏見として、里親家族=貧乏、学がない、と思われがちだけど。

我が家では、その偏見は当て嵌まらないらしい。

それもこれも、この家の大黒柱であり、子供達の精神的柱ともなっている、偉大な…。

「…あ、萌音ちゃん。おはよう」

「おはよう…。…パパ」

そう、このパパのお陰なのである。
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