お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
『ホテル9(クー)』はクリスマスの装飾に包まれ、いつも以上に華やかな空気に満ちていた。

ロビーの中央には、大きなツリー。カップルたちが寄り添いながら、楽しそうに写真を撮っている。

ーー別世界みたい。

仁さんがロビーで待っていてくれ、そのまま社長室隣の会議室へと案内された。

会議室には、すでに全員が揃っていた。

テーブルを挟んで、雅さん、見知らぬ男性、そしてあの女性。その横に大和副社長と仁さん。

私たちはーー圭衣ちゃんとようちゃんに挟まれるように、向かい側へ座った。

雅さんと目が合う。

……やつれている。

目の下にはクマ、無精ヒゲもそのまま。こんな顔、初めて見た。

ーーでも。

だから何?

この空気、やっぱり無理。早く終わらせたい。


「美愛ちゃんが無事でよかった。これから誤解を解いていこうね」


大和副社長の優しい声。

……笑えない。

仁さんと副社長が仲介役となり、話し合いが始まった。


「美愛ちゃん……俺がまた君を傷つけていたなんて」


雅さんの声は、驚くほど弱かった。


「どう謝れば、許してもらえるんだろうか」


その言葉を聞いても、何も動かない。

他の女性と腕を組んでいたこと。
帰宅した彼から漂った、あの甘い香り。

全部、ショックだった。

でも、一番は……嘘。

言葉が出ないまま、ただ見つめていると、


「あのね、お嬢ちゃん」


あの女性が、ゆっくり口を開いた。


「私と雅は変な関係じゃないの。ただのビジネスよ」


……ビジネス?


「ねぇ、聞いてる? 何でもないのよ?」


甘ったるい香りと同じ声で、私を見下ろす。


「あなたが勝手に話をこじらせてるだけ。雅が可哀想だわ」


ーーまた、それ?

胸の奥が、ひどく冷える。何もしていない私が悪い。信じた私が悪い。

……あの時と、同じだ。

その時、隣にいた男性が低く言った。


「やめろ。その言い方は違う」


静かだけど、はっきりとした声。


「原因はお前だ。彼女のせいじゃない」

「でも、これじゃ雅がーー」


言いかけたところで遮られる。


「いい加減にしろ」


短く、強い一言。

雅さんは、まだ何も言わない。

……どうして?
言い訳もしないの?

会議室の空気が、重く沈む。

言い争う男女。黙ったままの雅さん。様子を見ている仁さん。そして、圭衣ちゃんを気にかける副社長の視線。

どうして?

こんな状況なのに、私は不思議なくらい、冷静だった。
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