お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
「あ、あ、あのね……あのね……雅さんが甘い香りをつけて帰ってきた時、すごくショックだったの」


不安だった日々が、頭をよぎる。


「その上、予定が嘘だってわかって……」

「うん。俺が傷つけたことはわかってる。ごめんな」


苦しそうな彼の声。「ごめん」と言ってもらいたいわけじゃない。


「あのね、違うの……もちろん傷ついたけど」


言葉が続かない。どう言えばいいのか、わからない。


「……ううん、やっぱり何でもない」


立ち上がろうとした瞬間、腕を引かれた。バランスを崩して、雅さんの膝の上に倒れ込む。そのまま抱きしめられた。


「ちゃんと話さないと、ずっと不安なままだよ」


低く、優しい声。


「何がそんなに君を悩ませてるのか、教えて」


逃げられないくらい、しっかり抱きしめられている。

……言いにくい。けれど、もう逃げちゃダメ。彼の言う通りだ。この話を始めたのは、私なんだから。

話そうとするけど、うまくいかない。口を開いては閉じて、また開いて。言葉にならない。

雅さんは、何も言わずに待ってくれている。

……どうして私は、こうなんだろう。

圭衣ちゃんやようちゃんみたいに、うまく言えない。こんな自分が、嫌になる。

そっと、彼の胸に顔を埋めた。腕を回して、抱きしめる。久しぶりに感じる温もりと、彼の香り。

それだけでーー涙が、溢れてきた。

雅さんは何も言わず、私の頭に軽く顎を乗せる。そして、優しく背中を撫でてくれる。


「ゆっくりでいいから」


その一言が、余計に胸に刺さる。優しくされるほど、自分の不甲斐なさが、浮き彫りになる。
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