お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
ねぇ、私はどうしたいの。このまま、はっきりさせずに結婚するつもりなの?話し合いたいって言ったのは、私でしょう。

このままじゃ、何も解決しない。

意を決して問いかけようとしたけれど、彼を見ることができない。顔を埋めたまま、口を開いた。


「わ、私って……何?」


震える声。


「雅さんにとって、私は何なの? ただの飾りのお人形なの?」

「えっ……どういうこと、美愛ちゃん?」


逆に問い返されて、息が詰まる。ちゃんと、言わなきゃ。


「あのね……雅さんから甘い香りがするたび、他の女性と一緒だったってわかったの」


喉が締めつけられる。


「だから……雅さんにとって、私はそういう対象じゃないんだって」


言葉が途切れそうになる。


「私に魅力がないから……だから……」

「待って、美愛ちゃん」


彼の声が、少し強くなる。


「本気で、そう思ってるの?」


一瞬の沈黙。


「毎晩、君をただ抱きしめて眠るだけ」


低く、押し殺した声。


「それが、どれだけつらいか……わかる?」


胸が、ドクンとした。


「もっと触れたい。もっと先へ進みたい」


彼の真っ直ぐな言葉。ゆっくりと顔を上げ、視線を合わせた。


「……じゃあ、私は、お飾りじゃないの?」


雅さんは、迷いなく首を横に振った。


「違う。美愛ちゃんは、お飾りなんかじゃない」


そのまま、まっすぐ見つめてくる。


「もう嘘はつかない。何でも話す」


こくり、と頷いた。胸の奥で荒れていた波が、ゆっくりと静まっていく。


その瞬間ーー雅さんが、片膝をついた。


「よかった。もう一度言わせて」


静かで、でも確かな声。


「花村美愛さん」


名前を呼ばれ、肩がピクリとする。


「俺と結婚して、一緒に子供たちの父さまと母さまになって、あのお菓子屋を、二人でやってください」


ベルベットの箱が開かれ、そっと差し出された指輪。


ーー覚えていてくれた、あの日の約束を。


ずっと、待っていた言葉と婚約指輪。ずっと、言いたかった言葉。二回目のプロポーズは、指輪とともに。


「……はい」


やっと言えた言葉に、涙が滲む。


「よろしくお願いします」


左手の薬指に、指輪がはめられる。世界で、たった一つの指輪。彼が、私のために作ってくれたもの。

そっと、顔が近づく。触れるだけじゃない、深い口づけ。

ーー初めて愛する人との、大人のキス。

私は、ただその温もりに身を委ねた。
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