お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語
「あ、あ、あのね、あのね……雅さんがいよりさんの香水の香りをつけて帰ってきた時、すごくショックだったの。その上、予定が嘘だとわかってしまって」

「うん、俺が傷つけたことはわかってる。ごめんな」


苦しそうに雅さんが言った。


「あのね、違うの。あっ、もちろん傷ついたけど……」


どう切り出せばいいのか、しばらく考えたが結局わからず、諦めることにした。


「ううん、やっぱり何でもない」


立ち上がりソファーから離れようとした時、腕を優しく引っ張られてバランスを失い、彼の膝の上に倒れ込んだ。そのまま座らされて抱きしめられた。


「意思の疎通をしなければ、ずっと不安なままだよ。俺は美愛ちゃんと結婚したい。だから、教えてよ。何がそんなに君を悩ませているのか」


逃げられないほどの力で抱きしめられている。

こんなこと言いにくいし、聞きにくい。でも彼の言っていることは正論だ。この話題を始めたのは私だし、「このままじゃ結婚できない」と思っているのも私なのに。

彼の目を見て話そうとするが、うまく言葉にできない。魚のようにただ口を開けたり閉じたりするだけを繰り返す。雅さんは辛抱強く待っていてくれていた。

どうして肝心な時に、いつもこうなってしまうのだろう。圭衣ちゃんやようちゃんのようにうまく立ち回れない、こんな自分が心底嫌になる。

彼の胸に顔を埋め、手を背中に回して抱きしめた。久しぶりに触れる雅さんの温かく広い胸元と彼の香りに安心したのか、不意に涙が溢れてきた。雅さんは私の頭に軽く顎を乗せ、優しく背中をさすってくれた。


「ゆっくりでいいから」


優しくされればされるほど、自分の不甲斐なさが際立ち、いたたまれなくなる。
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