お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
きらびやかなミッドタウンの中心地よりも、庶民的な商店街の方が落ち着く。どこか、下町の実家を思い出させるからだ。

『喫茶Bon』は、確か午後7時まで営業しているはずだ。

ドアを開け、一番奥の、商店街が見える窓際のテーブル席に腰を下ろした。運よく、客は私ひとりだった。

注文した紅茶が運ばれてくる。カップを両手で包み込む。

いつもなら、一人の時に話し相手になってくれるママさんも、何かを感じ取ったのだろう。そっと私を一人にしてくれた。

指先から、全身へと、紅茶の温かさがゆっくりと広がっていく。

なぜ、こんなに胸が締めつけられているのだろう。

あの社内メールのせい? 

……それだけじゃないよね。

どうして、こんなに苦しいのだろう。

洋服の件で、圭衣ちゃんに迷惑をかけたこと? 

それもある。

でも一番の理由は?

……ああ、そうか。

社長ではなく、雅さんから向けられた言葉だったんだ。

まるで取り調べのようで、私が悪いみたいで。あんなことを、彼に聞かれるなんて思ってもみなかった。

今まで見たことのない表情と、冷たい声。それを思い出すだけで、胃の奥が冷たくなり、呼吸が浅くなる。

商店街を行き交う人々が、涙で次第にぼやけていく。

……なんで、こんなに悲しいの。

雅さんが、私のことを信じていないから……?

同居して1ヶ月。良好な関係だと思っていたのは、私だけだったのかもしれない。少しずつ、お互いのことを理解し合えてきたーーそう感じていたのに。

思い浮かぶのは、一緒に料理をしたり、笑い合って過ごした日々ばかりだ。

このまま、同居を続ける……?

もう、終わりなのかな。

いやだな。

終わってほしくない。

もっと、一緒にいたい。
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