お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語
第6章:姫と悪魔 #2

美愛サイド

トイレの個室で声を抑えて泣いている。

どれくらいここにこもっているのだろうか?
まだ勤務中なのに、いつまでもこうしている訳にはいかないのはわかっている。それでも、大粒の涙を止める術を知らずにいた。



雅さんとの同居生活は、思った以上に穏やかで心地よい。少しずつお互いのこともしれ、上手くいっている--そう感じてたのは、私だけだったのかも知れない。それを思い知らされたのは、たった30分前に起きたことが始まり。



水曜日の今日。午前中は来客があり忙しかったが、午後になり、通常業務ができるほど落ち着いてきた。

秘書室のコピー用紙をもらうために、総務部へ向かう。一抹の不安を抱えて……それはここしばらく、佐藤麻茉さんをできるだけ避けるようにしているから。あの強烈な出会いと彼女からの罵声は、思い出すだけで体に嫌な緊張感が走る。

総務部をそっと覗くと、運よく彼女はいなかった。いつも雑談をする総務のおばちゃんこと石田さんが、すばやく駆け寄ってきた。


「あっ、美愛ちゃん、ちょっとちょっと」


石田さんは私を人目のつかない角へ招いた。


「今日の午後、これが社内メールで送られてきたのよ。私の周りの席の子も来ていたみたい。美愛ちゃん、何か送られてきた?」

「先ほど社内メールをチェックしましたが、何も届いていませんでした」


眉をひそめ、周りを警戒しながら小声で話し始めた石田さん。


「やっぱり。なんとなく嫌な予感がしたから、一応メールをコピーしておいたの。社長に報告したほうがいいと思うよ。私たちはメールに書かれていることを信じていないけれど」


そう言いながら、半分に折った紙を手渡された。
< 61 / 138 >

この作品をシェア

pagetop