お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
これは、俺の会社だけの問題じゃない。慶智の王子ーー七人全員に関わる問題だ。

佐藤麻茉は、『ホテル9(クー)』だけでなく、彰人の『近衛総合病院』、そして実家の『スーパー伊乃国屋』からも出禁になっている。だが、それはまったく守られていない。

そして、約6ヶ月前。涼介の事務所、『伊集院総合法律事務所』の記念パーティーで、事件は起きた。

佐藤麻茉は、涼介の妻である鈴音ちゃんに暴言を吐いた。それだけじゃない。鈴音ちゃんの指から結婚指輪を無理やり外そうとし、引っかき傷まで負わせた。

……だから、涼介を待たずに俺が詰問する。
けれど本音は、誰にも美愛ちゃんの泣き顔を見せたくない。

美愛ちゃんの向かいに腰を下ろし、前かがみに身を乗り出す。心を無にするため、しばらくうつむいた。

俺が、すべて受け止める。君の怒りも、悲しみも、不安も、絶望も。全部、俺が引き受ける。その代わり、必ず守る。癒してみせる。

……たとえ、君に嫌われても。

ゆっくりと顔を上げ、ケータイの録音機能をオンにする。そして、美愛ちゃんを無表情で見つめた。

次に発した声は、自分でも驚くほど低く、冷たかった。


「これから質問することに対して、正直に答えてください」


美愛ちゃんは、不安そうに表情を曇らせた。左手で胸元のネックレスを服の上から握りしめる。時折、下唇を強く噛み、わずかに息を漏らしている。

……泣くのを、必死に堪えているのだろう。

俺は、心の中で謝ることしかできなかった。

彼女の身につけている服は、すべて姉が彼女のためにデザインしたものだ。そういえば、姉は有名なアパレル会社の社長だと言っていた。

彼女の素行についても問いただす。沈痛な面持ちでこちらを見つめ、小さく首を振り、やがて視線を逸らした。

……そんなことをするはずがない。それは、俺が一番よく知っている。だって俺たちは、一緒に暮らしているのだから。

彼女に、姉へ電話をかけるよう促した。か細い声で、うつむいたまま話し始める。おそらく、ドイツ語だろう。何を話しているのか、俺にはまったくわからなかった。
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