お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
精神的に疲れていたのだろう。彼女は、そのまま俺の腕の中で眠りに落ちた。

……どうするか。

このままソファーで寝かせるわけにはいかない。とはいえ、勝手に彼女の部屋に入るのも気が引ける。

クイーンサイズの俺のベッドなら、問題ないか。二人でも、十分に余裕がある。

美愛ちゃんを起こさないよう、そっと抱き上げる。ガラス細工のように華奢な体を大切に抱え、ベッドへ運んだ。静かに寝かせ、しばらくその寝顔を眺めてから、寝室を出る。




リビングへ戻ると、すぐにケータイを手に取った。あいつに電話をかける。佐藤一家を、徹底的に潰すために。

しかし、明日の話し合いまでに間に合うか。
一瞬、不安がよぎる。だが、不可能を可能にする。それが、烏丸一族だ。


「ああ、お願いする……俺自身にも腹が立っている。決心がついたよ、計画を実行する……ありがとうな」


通話を終え、慶智の王子たちにもLIMEで連絡を入れた。まずは確実に、外堀から固める。





キッチンを片付け、ドライヤーを洗面台へ持っていく。そのとき、カウンターの隅に赤いものが目に入った。

小さな赤いベルと牛のチャームを手に取る。
ネックレスだった。

湯船に浸かりながら、言葉がよみがえる。

ーー美愛ちゃんの言葉。

『あのキャラメルに、元気をもらった気がします。安心するんです。守られているようで』

『でも、私一人でお菓子屋さんになっても意味がないから』

『父さまーーじゃなくて、父から』

ーー久美子さんの言葉。

『やはり、あなたとはまたご縁があったのですね』

ーー圭衣ちゃんの言葉。

『あなたは昔、約束したことを実行すればいいだけ』

そしてこのネックレス。赤いベルと牛のチャーム。昔、俺が彼女に渡したキーホルダーの一部だ。

美愛ちゃんは不安なときや悲しいとき、いつもあれに触れていた。間違いない。美愛ちゃんは、あのときのお姫様だ。




寝支度を終え、ベッドへ入る。彼女の反対側から、静かに。

しばらく、その寝顔を見つめた。そっと触れるように、唇に口づける。そして起こさないように、抱きしめた。

彼女が、俺の胸に顔を埋める。俺のパジャマを握るその仕草が、愛おしくてたまらない。


「おやすみ、俺のお姫様。愛してるよ。これからは君をたっぷり甘やかすから」


あの日から、ずっと思い続けていた小さなお姫様。その子が今、俺の腕の中で眠っている。

やっと見つけた。

俺のお姫様。

もう、離さない。

ずっと俺のそばにいてくれ。

一緒に叶えていこう。

あの日、二人で約束したことを。




ーーさて。
明日の朝、君はどんな顔をするのだろう。
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