お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
お昼休み。食欲のない私はホットラテを手に、一人で空中庭園へ向かった。

10月半ばとはいえ、天気の良い日中は暖かくて過ごしやすい。他に誰もいないその場所で、昨日と同じベンチに座っていろいろと考えてしまった。

まず、昨日の夜から雅さんはやけに優しい。

それに、父さまからのLIMEメッセージが、頭から離れない。

『佐藤麻茉に対する誹謗中傷の件について、伊集院涼介先生に法的措置をお願いする。警察にも被害届を提出する』

なんだかモヤモヤする。

被害者である私が知らないところで、すべてが決まってしまう。気がつけば、話はどんどん進んでいる。みんなはきっと、私のことを思って行動してくれているのだろう。

でも--なぜ私の気持ちや意見を聞いてくれないの? 

……私って、そんなに頼りないのかな。


「あ、あの。社長秘書の花村美愛さんですか?」


突然声をかけられ、振り向くと、私と同じくらいの年齢の小柄で可愛らしい女性が立っていた。

誰だろう?


「はい」


彼女は一礼し、緊張した面持ちで話し始める。

彼女は『伊集院総合法律事務所』で秘書を務めている伊集院鈴音さん--涼介先生の奥様だった。


「あなたにとても不快で苦痛な思いをさせてしまいました。本当に申し訳ありません」


深々と頭を下げた彼女に、思わず声をかけた。


「え、えっと……まず頭を上げてください。昨日って?」


涼介先生とは昨日会っていないのに、どういうことだろう。


「昨日、主人が雅さんに指示を出して、被害者であるあなたを問い詰めることに。本当にごめんなさい」


今にも泣き出しそうな鈴音さん。


「私、この件について何も聞かされていなくて。鈴音さんのせいじゃないから……もう謝らないで」


立ったままの彼女に、隣に座るよう手で促した。座った鈴音さんが話を続ける。
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