お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
『ようちゃん、もうすぐ帰って来るって聞いたよ。あのね、聞いてほしいことがあるの。連絡して。みんなには内緒ね』

送信してから10秒も経たないうちに、返信が届いた。

『おーい、今空港。これから東京に戻るよ。日本時間で金曜日の3時45分に到着予定。銀座のホテル「キャッスル」に数日宿泊するから、着いたら電話する』

ようちゃんが帰ってきて早々に、私の話を聞いてもらってもいいのかな。

……でも、誰にも相談できない。

このまま寝られそうにない。

キッチンでホットアーモンドミルクを作っていると、雅さんが帰宅した。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す彼から、またあの嫌な香りが漂ってくる。

むせるような、甘ったるい香り。

さっきまで作っていたホットアーモンドミルクも、飲む気になれず、そのままシンクに流してしまった。

水を手にした雅さんが何か話しかけてくる。
けれど、全く頭に入ってこない。

あの香りが、頭の中を埋め尽くしてしまうから。

私は、ちゃんと笑えていたのかな。




本当はこんなことをしたくない。

けれど、彼がお風呂に入っている間に、寝室のクローゼットへ向かった。さっきまで着ていた上着を、震える手で取り上げる。

雅さんの香りに混じって、左腕のあたりから--やはり、あの香りがした。

素早く上着を戻し、プードルの『Bon Bon』を抱いて、寝たふりをする。

今の気持ちを悟られてはいけない。私の勘違い……かもしれない。

でも、雅さんの顔は見たくなかった。

寝室に入ってきた雅さんは、いつものように私を抱きしめる。まるで、何事もなかったかのように。
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