お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜
あまり眠れないまま迎えた金曜日の朝。

午後にはようちゃんが帰国すると思うと、少しだけ心が軽くなった。

そして雅さんは今朝も、いつもと変わらない。


「美愛ちゃん、おはよう。午後は田島ペーパーの副社長との商談。そのあと食事に行く予定だよ」

「わかった、夕飯はなしね。田島ペーパーの副社長って、雅さんの先輩なの?」

「そう、慶智大学のね。アメリカから帰国して、副社長に就任したんだ。今日は二人でお祝いも兼ねて食事をするんだよ」

「それは楽しみですね」


……普通に会話できていたかな。顔、強張ってなかったよね。

大丈夫。いつも通り。




この日は珍しく、午後遅くからの外出以外は雅さんが社長室にいた。

2月の『カフェBon Bon』オープンまであと数ヶ月。紙カップは、おそらく田島ペーパーに決まるだろう。けれど、まだ詰めきれていない部分もあり、この忙しさは直前まで続くはずだ。

遅い昼休み、雅さんは再び外出した。

最近は、会社にいる日でもお弁当を持参しないことが多い。妙なことに、私も一人分の食事やお弁当を作る気がなくなっていた。以前は毎日、当たり前のように作っていたのに。

なぜか食欲もない。何を食べても美味しく感じられない。

……まさか、妊娠?

いや、それはない。だってまだ、そういう関係じゃない。

じゃあーーどうして?

ようちゃんからメッセージが届いた。無事に到着し、銀座のホテルには6時に着くとのこと。

どちらにしても、今日も雅さんは遅い。ようちゃんに、会いに行こう。




終業後、彼女の好きな和栗のモンブランを買うため、『ホテル9(クー)』内のパティスリーへ向かった。無事に二個を手に入れ、人で賑わう金曜日のエントランスホールを進んでいく。
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