せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 そんなメルーナ嬢を侮辱することを、私は許せない。そう思って、私は一歩前に出ようとした。
 ただ私は、足を止めることになった。私よりも先に、前に出た人がいたからだ。

「……ふざけるな!」
「ひっ!」
「自分の身勝手さをメルーナ嬢のせいにするな! あなたがやったことは最低なことだ。監禁されている間、いや今だってメルーナ嬢は深く傷ついている。あなたは自らの保身のために、彼女の心に一生消えることのない傷を負わせたんだ。その罪は……重い!}

 ウォーラン殿下は、見たことがない表情で言葉を発していた。
 彼のその表情からは、確かな怒りが伝わってくる。彼も私と同じように、サジェードの身勝手さに憤っているようだ。
 その言葉に、当のサジェードはかなり怯んでいる。ウォーラン殿下の気迫に、押し潰されているようだ。

「サジェード、お前には罰を受けてもらう。一緒に来てもらうぞ?」
「く、そっ……!」

 イルドラ殿下の静かなる言葉に、サジェードはゆっくりと項垂れた。
 これから受ける報いを噛みしめているのだろう。その表情は暗かった。
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