せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 私達は、ディートル侯爵家の屋敷の客室に来ていた。
 これからのことについて、話し合わなければならないからだ。
 ラフェシア様にメルーナ嬢、それからイルドラ殿下とウォーラン殿下、ここにいるのは私も含めて五人である。

「メルーナ、やはりあなたはラウヴァット男爵家の屋敷に戻った方が良いと思うわ。あなたのお兄様――マルシド様が心配していたもの」
「お兄様が、ですか……」

 ラフェシア様の言葉に対するメルーナ嬢の反応は悪かった。
 あまり気が進んでいないといった感じだ。やはりラウヴァット男爵家の屋敷には、戻りたくないと思っているということだろうか。
 それについては、理由を聞いておかなければならない。彼女も彼女で、色々と抱え込んでいるものはあるだろう。それは吐き出しておいた方が良いものだ。

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