せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 それは私も、ある程度は聞いていたことだ。イルドラ殿下はシャルメラ嬢のことを、ウォーラン殿下はメルーナ嬢のことを、それぞれ知っていたのである。

「あの時に事実に気付いていれば、もっと早くに事件を解決できていました。あなたを助け出すこともできた。僕は愚かでした。アヴェルド兄上なんかを信頼するなんて……」
「それについては、俺だって同じだ。シャルメラ嬢のことを知っていたからな」
「イルドラ兄上は、リルティア嬢と協力してアヴェルド兄上達の悪事を暴いたではありませんか。結局僕は、何もできなかった。僕がもっとできる王子であったなら、あれ程の命が奪われることもなかったかもしれない」

 ウォーラン殿下は、真面目で誠実な人だ。きっと彼は、身勝手だった自身の兄であるアヴェルド殿下の死さえも、心から悔やんで後悔している。
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