せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
「イルドラ殿下……」
「メルーナ嬢……」

 私は、イルドラ殿下の手をそっと取った。
 それで彼には伝わっただろう。私も覚悟を決めていると。

「……私は」

 ウォーラン殿下とイルドラ殿下の言葉を受けて、メルーナ嬢は目を瞑っていた。
 それは恐らく、何かを考えているのだろう。いや、今までのことを思い出しているのかもしれない。
 とにかく彼女には、整理する時間が必要であるだろう。私達は黙ってそれを待つ。

「私は、許されても良いのでしょうか?」
「許す許さないの話ではありません。あなたには罪などはないのですから」
「そこまで言っていただける程、私は清廉潔白ではありません。これでも、色々と思惑があったのです。私もアヴェルド殿下との関係を利用していた一人です」
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