せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
「意外とやんちゃだったんだな」
「そうかもしれません。両親やお兄様のことを、困らせることもありました」

 私は、イルドラ殿下の言葉にゆっくりと頷いた。
 昔の私は、今と比べるとかなりやんちゃだったといえるだろう。

 そういった気持ちは、いつしか忘れてしまっていた。ここに来なくなったのは、いつの頃だっただろうか。その頃から、今の私はできたといえる。
 ただ、だからといって昔の私を忘れた訳ではない。こうやってここに来て、それがわかった。

「イルドラ殿下は、どうだったのですか?」
「俺?」
「ええ、私はイルドラ殿下の話が聞きたいです」

 私は、イルドラ殿下をじっと見つめた。
 すると彼は、笑みを返してくれる。それは話してくれるということだろう。

「俺は今と、そこまで変わらない子供だったと思う」
「……そうなのですか?」
< 233 / 246 >

この作品をシェア

pagetop