せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。
 地下牢から自室に戻って来た私は、イルドラ殿下を招いていた。
 彼とは、ネメルナ嬢のことで話がしたかった。というのは建前で、単純に愛する人と自室で時間を過ごしたかったのである。
 とはいえ、やはり最初は真面目な話をすることになった。それは必要なことなので、私も納得している。

「まあ、ネメルナ・オーバルは処刑される。それは決定事項だ。覆ることはない。王家の面子もある。曲がりなりにも王子が一人殺されているからな」
「ネメルナ・オーバルという人間はこの世から消えるということですか?」
「ああ、だが彼女は生きる。そこはウォーランが譲らないからな。まあ、俺としても別にネメルナ嬢に関しては命まで奪いたいという訳ではない。兄上を殺してくれたことには、感謝している部分もあるしな」

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