『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
「次は骨盤底筋(こつばんていきん)を鍛える運動です」

 子宮や膀胱を下から支えているだけでなく、赤ちゃんが通る産道を取り巻いている筋肉だから鍛えておいた方がいいという説明がなされた。
 
「なるほど」

 新がまた納得顔で頷くと、すぐに腰上げ運動が始まった。
 仰向けに寝て、足の裏を床にピッタリと張り付けた姿勢で両膝を軽く立てた。
「はい、ここで息を吸いながら肛門を引き締めます。できましたか? では、息を吐きながら腰を上げてください。そこで止めて、息を吸ってください。今度は息を吐きながら腰を下ろします。そうです、上手ですね。それでいいですよ。そこでリラックスしてひと呼吸置きましょう」

 乗せるのが上手なトレーナーだなと思いながらも、乗せられている自分がおかしくなって考子は思わず笑ってしまった。
 
「はい、次は膣の周りを柔らかくする運動です。寝そべったままの状態でお尻の筋肉と肛門をギュッと締めましょう。そして緩めます。ギュッ、フ~、ギュッ、フ~、ギュッ、フ~と10回繰り返してください」

 くしゃオジサンのような顔をして肛門を締めている新を見て考子は笑いそうになったが、ぐっと堪えて次の運動に備えた。
 
「はい、今度はしゃがみ込み運動です。座って膝を立てた状態で足を開いてください。そうです、その姿勢です。顔の前で両手を合わせて、両肘を両膝に当てるようにして、両肘で膝を押し広げてください。そうです、いいですね。それを3回繰り返します」

 すべてやり終えると、考子の額と首にうっすらと汗が浮かんできた。
 
「はい、お疲れさまでした。皆さん上手ですね。初めてとは思えない動きでびっくりしちゃいました。これからも毎日続けてくださいね」

 本当に見られているような気がして、考子は思わず辺りを見回してしまった。そんなわけはないのだが。
 
「最後にリラックスのポーズをとりましょう。横向きに寝て、足を軽く曲げて、腕は自分が楽だと思う場所に置いてください。お腹の赤ちゃんを感じながらゆっくりとしたタイミングで、息を吐いて~、吸って~、吐いて~、吸って~、吐いて~、吸って~、吐いて~、吸って~、フワ~~~」

 トレーナーのあくびに誘われるように考子も大きなあくびをした。

 新は? 
 
 隣で同じポーズをしていた彼はとろんとした表情で寝息を立てていた。

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