雨の物語 ザ レイニーズストーリー
 ※ 実は著者もそうだった。 妹が生まれるまでは。
5歳の頃から留守番をしてて一人には慣れてるんだ。 共働きだったから寂しいなんて言えなかった。
 だから結婚した時は自分が信じられなかった。 取り囲んでくれる家族が出来たなんて、、、。

 「ただいまーー。」 7時を過ぎると父ちゃんたちの疲れたような声が飛び込んでくる。
母さんもやれやれって感じで居間に入ってくる。 「お腹空いたろう? 夜ご飯作るからね。」
一休みすることも無いままに母さんは台所に向かう。 そして玉葱やニンジンなどを切り始める。
20分もすると辺りにいい匂いが漂ってくる。 今夜も煮物だ。
 たまに外食に出掛けることも有る。 そう頻繁ではないけど。
父ちゃんも仕事着を脱いでテーブルの前にドカッと腰を下ろす。 そして溜息を吐きながらビールを飲み始める。
 「高校はどうだ?」 「どうだって言われても始まったばかりだからさあ。」
「そうかそうか。 悪い悪い。」 そう言いながらセブンスターに火を点ける。
 プーっと吐き出した煙がユラユラと上っていく。 ぼくはのんびりテレビを見ている。

 それからややあって「夜ごはん出来たわよ。」って母さんがお椀と箸を持ってきた。
テーブルを囲んでいつも通りの親子の夕食が始まる。 父ちゃんたちはあれやこれやと話し合っている。
 「なあ、妹か弟か欲しくないか?」 「いきなり聞かれても、、、。」
「でもお前だって欲しいだろう?」 「そうだなあ、、、。」
「はっきりしろよ。 男なんだろう?」 「まあまあ、そんなこと言ったら考えられないじゃない。」
「そういうお前はどうなんだよ?」 「産めるもんなら産んであげたいと思うけど、、、。」
「決まった。 来年には妹を作ろう。」 (なんて突拍子も無いことを、、、。)
 まあ、これが我が家の父ちゃんと母さんなんです。 毎年同じことを言い合ってるような気がするけど。
 夕食を済ませると父さんがお風呂を沸かしに行きます。 母さんは洗濯を始めました。
ぼくはのんびりテレビを見てます。 普通の家の普通の家族の何の変哲も無い夜ですね。
 (明日はどうなるんだろうなあ?) またまたクラスのことを考えてみる。
あいつらはどうせまた訳の分からないことで騒ぐんだろう。 純子ちゃんはどうなんだろう?
 クラブだって紹介されるみたいだし、何かやってみようかなあ? いろんなことを考える。
うとうとしていると父さんの声が聞こえた。 「風呂だぞ。」
 「ふぁーーーーーい。」 眠そうな声で返事をする。
「さっさと入れよ。」 父さんもいつものようにぼくを急かす。
 お腹もいっぱいだし眠いし風呂には入りたいし、モソモソしながら湯をかぶって浴槽に。
ぼんやりしてると父さんの声が聞こえた。 「父さんたちも入るんだからな。」
 その声に急かされて体を洗ったぼくはパジャマを着て自分の部屋に飛び込む。
これといって趣味も持たないぼくは布団にひっくり返るとそのまま寝てしまった。
 翌朝もまたいつも通りの朝なんです。 6時半には母さんも起きていてご飯を作ってます。
父さんも歯を磨いたり髭を剃ったり忙しそう。
 ぼくも起こされて学校の準備やら朝食やらを、、、。 そして家を飛び出すんだ。
分かれ道にまで来ると純子が歩いてくるのが見えた。 「おはよう!」
「ああ、おはよう。 今日はオリエンテーションだねえ。」 「そうだそうだ。 部活も紹介されるんだって。」
「何かやるの?」 「さあねえ。 今までこれといってやってないから。」
「私もなのよ。 中学も帰宅部だったから高校もそれでいいかなって、、、。」 ぼくらは話しながら歩いている。
バス通りに出てくると小学生たちが歩いて行くのが見えた。
 「私たちもああだったよね。」 「そうだ。 緑のおばさんとか立っててさあ。」
「あれだってやってるほうは大変なんだよ。 うちのお母さんもそうだったから毎日話を聞いたよ。」
 「だよねえ。 信号も見なきゃないし子供も見なきゃないし、、、。」 そこへバスがやってきた。
乗り込むとぼくは前の椅子に、純子は後ろの椅子に座って窓の外に目をやる。 ポカポカしてて気持ちがいい。
 「山下君ってさあ、彼女とか居たの?」 「居ないよ。」
「そうなんだ。」 「どうして?」
「付き合ってもいいかなって。」 「そうなの?」
「私も独りぼっちだし、いつも同じバスに乗るんだしいいかなって。」 「それだけ?」
「うん。」 バスに乗っている間にこんな話をしたのはいいけど、、、。
 バスを降りると教室までは猛ダッシュ。 他の友達もみんなそうみたい。
昇降口では我先にと下駄箱を探し靴を履き替えて教室へまっしぐらーーー! ドタバタと廊下を走ってやっと1年の教室へ、、、。
 ぼくらが入るのを見届けたように担任が入ってきた。 「今日はオリエンテーションだからな。 その後でみんなで教科書を取りに行くように。」
ただいま時刻8時47分。 さあさあ講堂へ出発だあ。
 入り口はごった返しております。 2年生も3年生も居るんだからしょうがない。
各クラブの部長たちも資料を持って慌ただしく走り回ってます。 落ち着かないなあ。
9時になると生徒会長が挨拶に立ちました。 3年の女の子らしい。
 行動にはクラブの顧問も勢揃い。 厳しい顔をしてる。
その中でクラブが紹介されていく。 野球部 ソフトボール部 バレー部 陸上部、放送部 文化部 茶道部、、、。
バレーはなかなか強いらしい。 陸上はまあまあかな。
野球部は去年やっと地区大会で1勝したんだって言ってたな。 後はどうだろう?
 ソフトボール部は去年初めて試合に出れたんだって言ってたよなあ。 まだまだこれからだ。
顧問の先生たちは相変わらず厳しい顔でぼくらを見渡している。 怖そうな先生ばかりだ。
 隣では純子も緊張した顔で話を聞いていた。 他の人たちも以下同分。
オリエンテーションが終わると「やれやれ、、、。」っていう顔でみんなが教室に戻ってきた。 「部活も大変そうだなあ。」
「いいじゃない。 ここのバレーはけっこう強いらしいよ。」 「けっこうどころじゃないわよ。 あれじゃあ鬼じゃない。」
「まあいいからいいから。 頑張ってねえ。」 なぜかグループになって励ましてるんだか貶してるんだか分からないけど盛り上がってる。
 「さてと、教科書と体操服を貰ってこないとねえ。」 洋美が大きな声で言うものだからみんな真っ青になった。
「やべえやべえ。 忘れる所だった。 行こうぜ!」 義之がみんなに発破を掛ける。
 「あれは会議室だったよなあ。 会議室って何処だって?」 「二階の職員室の隣だよ。」
「お前よく知ってるなあ。」 「通れば分かるよ。」
「さすがは空き巣君。」 「何だいそれ?」
「空き巣ってさあ、家の中を知ってないと出来ないじゃん。」 「知らなくても出来るけど、、、。」
「美幸、お前空き巣やってたのか?」 「変なこと言わないでよ。」
 兎にも角にも何処に行っても誰が何処に居るかすぐに分かる1年生です。 はーーーあ、こんなのと3年も付き合うわけ?



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