あなたと運命の番になる

優しさ

トラブル続きで忙しく、あっという間に金曜日になった。
和真は少し落ち着いた仕事にほっとするとともに、椅子で大きく伸びをする。

今日は蘭に会いに行く。
連絡しても返事はないし、もっと早く話したかったが、仕事が片付かず、今日になる。

この前のことを謝るとともに、またデートに誘うつもりだ。

和真は蘭の帰宅時間に合わせて、工場に向かう。

車内にはこの前買ったスカートが置きっぱなしだ。
今日上手く話せたら、スカートを渡して今度履いてきてもらいたいななんて思う。

工場に着くと、大勢の人が帰宅していく。
そこに細身のスタイルに肩ぐらいまでの黒髪の蘭を見つける。

「蘭ちゃん!」

蘭は声のした方を見つめる。

和真がやってきいてるのがわかり、とっさに逆方向に走り出す。会ってもきまづいだけだ。

「蘭ちゃん!ちょっと待って!!」

和真は蘭に追いつき、腕をつかむ。

「逃げないで!ちゃんと話したい。」

和真の真剣な表情に蘭はなんと言えばよいか分からない。そもそも和真は何一つ悪くない。いつも優しく気にかけてくれる素敵な人だ。自分が勝手に好意を抱き、相応しくないと分かって離れただけなのだから。

「蘭ちゃん、この前のレストランではごめんね。嫌な気持ちにさせたよな。」

和真は謝ってくれる。だけど、蘭からすれば謝らなければならないのは自分だ。奢ってもらい、気を使ってスカートまで探しに行ってくれたのに、直接挨拶もせず帰ったのだから。

「こちらこそすみませんでした。」

蘭は謝る。気まずくて目が合わせられない。

「ちょっとだけ時間いいかな?」

逃げれる雰囲気でもなく、蘭はこくりと頷き、2人は近くの公園のベンチに座る。
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