あなたと運命の番になる
「やっぱり12月は寒いな!」
和真はそう言って、自分がしていた大判のマフラーを蘭の膝にかける。
「山城さん寒くなっちゃいます。」
蘭は慌てて返そうとする。
「俺は大丈夫だから。」
和真は微笑む。蘭は和真の優しさに泣きそうになる。いつも先読みして親切にしてくれる。以前このベンチに座った時は、和真が残業申請をやってくれた時だ。残業させられてばかりの私を助けてくれた。
「もっと本当は早く会いたかったんだけど、色々都合がつかなくて、、、。」
和真が残念そうに話す。
「お仕事大変なんですか?」
「うーん。ちょっとトラブルあってね。でも解決してきてるから大丈夫!」
和真は答える。
「山城さんは凄いです!いろんな所に行って、どんなトラブルも成功させる。だから、みんなに認められて、尊敬されてるんですね。私も山城さんのおかげで働きやすくなって感謝してます。」
蘭は思ったことを口にする。
αだから出来て当然、社長の息子として成果を残さないといけない、社員を路頭に迷わせてはいけないというプレッシャーと戦ってきた。蘭の純粋な褒め言葉は和真の心を打つ。蘭への思いが溢れる。
「そんなふうに言ってもらえて嬉しいよ。
蘭ちゃんは優しいね!」
和真はそう言って改まった表情をする。
「蘭ちゃん!またデートしてくれないかな?今度は絶対嫌な思いなんてさせないから。」
和真との食事は楽しかったし、和真のことは素敵だと思っている。だけど自信が無い、和真の隣にいることの。
「あの…山城さんはどうして私みたいなのを誘ってくださるんですか。もっと綺麗で素敵な女性はたくさんいます。山城さんなら引く手あまただと思うんです。私なんかじゃあ隣で歩くのも身分不相応といいますか…」
「俺は蘭ちゃんがいいから、誘ってるんだけど!」
和真は蘭の言葉を途中で遮って言う。
「蘭ちゃんは真面目で頑張り屋で優しい。かわいくて充分魅力的だと思うけど。」
和真の言葉に蘭は顔が赤くなるのがわかる。ただ絶対に言わないといけないことがある。
「山城さんはご存知だと思いますが、私はΩです。ヒートだってあるし…。普通の恋愛なんてできません。そもそもαの山城さんとΩの私でデートなんておかしいと思うんです。」
蘭の言葉を聞いて、和真は少し難しい顔をする。
「本当はもう少ししたら言おうと思ってた。
それにもしかしたら蘭ちゃんも気づいてるんじゃないかとも思ってた。」
「なんの事ですか??」
「俺たちは番だ。」
蘭は目を丸くする。
「番だなんて、ありえません。私と山城さんじゃあ何もかも違います!それに番に出会えた人なんて聞いたことないです。」
「たしかに、出会える可能性は極めて低い。ただ出会って番になっている人もいる。」
和真と番??蘭は頭が真っ白になる。
「なんで番って分かるんですか!!証拠でもあるんですか!!」
「気づいたのは車の中で蘭ちゃんがヒートになった時。今まで感じたことない衝撃だった。だから、証拠と言われると難しいけど、本能的にわかった。」
蘭はあの時のことをはっと思い出す。和真の匂いを全身が欲していた。あんなに匂いに反応したのは初めてだった。蘭は和真に好意をもってしまっているから起こったのだと思い込んでいた。なので番だからだとは考えたこともなかった。
「山城さんは番だと思ったから、誘って下さったんですね。」
蘭は和真に誘われた理由が分かったような気がした。
「今言っても説得力ないと思うけど、初めに仕事教えてくれた時から、素敵な人だなって思ってた。番だと気づく前から惹かれていたよ。
番とか関係なく、俺は蘭ちゃんがいい。」