あなたと運命の番になる
「体調どう?」

「楽になりました。ありがとうございます。」

「怖かったね。」

「でも考えたら手紙1枚で驚きすぎですよね。なにもなかったんだから、大丈夫です。」

蘭はあえて明るく振る舞う。

「怖くて当然だ。無理はだめだよ。
ヒートが今回は早いね。手紙のことはその原因としてあると思う。他にはなにかなかったかな?例えば好きな人ができたとか。番が見つかったとか!」

蘭は頬が赤くなるのがわかる。蘭は和真の存在を拓也に話していない。いくら主治医である拓也にでも好きな人がいると言うのは恥ずかしくて出来なかった。それに叶わぬ恋を認めるのが怖かった。

「特にないです…。」

今回も勇気はなく、本当のことは言えない。

拓也は弟の樹から、親友に番が見つかったと話を聞いていた。そしてその親友は和真であり、和真の番の子が合う薬を飲めていないという状態だったので、瞬から紹介されてきた。
紹介されてきた時は、和真は本性を伝えていないとの事だったので、こちらも知らないふりをしていた。だが、和真は最近戻ってきていた。蘭はもう和真からアピールされてるんだろうなと予想する。

「あの…今回ヒートが重そうなので、薬強めにしてもらってもいいですか??」

蘭は遊助に対する恐怖、そして和真を思う気持ちからヒートに耐えられる自信がない。いつもならお金のことを考えるが、今回は薬にすがりたい。

「そうだね…。それは俺も思ってる。入院管理して様子をみたい。ただ病床埋まっちゃっててね。」

蘭が自ら薬を強くして欲しいと言うのは初めてだ。予算のこともあって、我慢する傾向が強い。ただ今はそんなことに構ってられないほど余裕がないのだろう。

「蘭ちゃん、もう1度聞くね。好きな人ができた。番の人が見つかったってことはない?」

蘭は拓也の真剣な表情にもう嘘はつけないと思う。

「最近、番だって言ってくれる人がいます。だけど、身分もなにもかも違ってて…。私なんかが隣にいるのはおこがましいような人なんです。」

蘭は俯きながら話す。

「そうなんだね。蘭ちゃんはその人のことどう思ってるの?立場とかは一旦おいておいてさ、ねっ。」

拓也は優しく微笑む。

「親切にしてもらってます。いつも助けてもらってばかりなんで、申し訳ないです。」

「頼りがいのある人なんだね。
蘭ちゃんはさ、その人のこと好き?」

蘭は答えられなくなる。好きかと言われたら好きだ。
ただ、口に出して認めてしまうのは怖い。捨てられたらどうしよう、今日お昼に言われたように気持ち悪がられるかもしれないと思ってしまう。

「蘭ちゃん。番を見つけられることは幸せな事だと俺は思っている。もちろん育った環境からなにもかも違うと不安かもしれない。だけど、番のつながりっていうのは強いからね。番の夫婦はずっと仲良しだと思うよ。俺も数人しか見たことないけど、好きで番になった人で仲悪い人は見たことがない。」

「だけど、怖いんです…。
番…。」

蘭は涙声になる。

拓也は番に対する恐怖心を与えているのは、この手紙の人間なんだと思う。

「たしかに、番になる時はΩの方が噛まれるから、痛みもあるし、全身に衝撃が走ると思う。だけど、それを包み込んでくれるような相手だったら、それも幸せに感じられると思うよ。
薬はまだ強いの出せるけど、その分体への負担が大きい。副作用だって強く出る。
今回はだすけど、このまま強い薬を飲み続けることはオススメしない。ヒートが終わったら、相手の人と話してみた方がいい。蘭ちゃんの怖い気持ちとか。そういうの全部受け入れてくれる人なら、次に進むこと考えてみた方がいい。」

「分かりました。」

蘭は頷いた。
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