あなたと運命の番になる
この家に来てからも蘭のヒートは続く。
瞳が優しく介抱するが、ヒートがよくなる様子はない。

真由も心配そうにしている。

「蘭ちゃん、体調良くなってないよな。」

拓也が帰宅して、瞳に聞く。

「そうねぇ。ヒートの頻度は減っていない。全然治まらないから、気持ち的にもしんどいと思う。やっぱり他人の家ってこともあって気を使ってる部分もあると思うし。それにご飯とかもあまり食べられてないから、体力的にも心配よね。」

「そっかぁ。結構強めの薬使ってるんだけど、効かないかー。もちろんまだ上の薬はあるけど、副作用も強くなるしなー。吐き気とかどう?」

拓也は少し難しい顔をして聞く。この薬は吐き気の副作用が出やすい。吐き気があると食欲が減り、体力がどんどん奪われてしまう。

「吐くっていうのは1日1回くらいだけど、気持ち悪そうにしてることは何度もあるわね。あんまり食べてないし、吐くものもないのかもしれないけど…。」

「それだと強い薬使いたくないな。ただヒートしんどいよな。どうするか…。」

悩む拓也に瞳が聞く。

「ねぇ、番の人ってどんな人なの?樹の友達なのよね?」

「ヤマシロの御曹司だよ。若いのにもう副社長みたいだよ。俺は直接会ったことはないけど。」

「凄いわね。
番の人は蘭ちゃんのこと好きなのよね?蘭ちゃん、番の人と会った方がいいんじゃないかって思うのよ。」

「樹の話だと蘭ちゃんに溺愛してるらしい。だけど、まだ付き合ってるとかじゃないみたいよ。蘭ちゃん男性に恐怖心あるみたいだし。」

「でも番の人と触れ合うことで疼きが良くなると思うの。精神的な安定もとれるし。」

瞳の意見は正しいと思う。薬も今強いのに変えると副作用が心配だ。できたら、強くしたくない。だけど、蘭ちゃんは番の人と会うことを了承するだろうか。
ただでさえ、今は手紙の人の件もあり、番に抵抗心が強い。

「蘭ちゃんはまだ相手の人にいろんなことをさらけ出せてないと思うんだ。Ωということで自分に自信がもてていない。それに相手との身分差のようなものも気にしてる。手紙の件もあった今、ヒートのしんどい時に相手に会ってくれるかな?」

拓也は思ったことを言う。
瞳も考え込む。

「たしかにそうよね。そうだけど…そうなんだけど…見てるとしんどそうだから、思い切って欲しいなって思ってしまって…。でも拓也の意見に従うわ。あくまでも主治医は拓也なんだし。」

瞳の意見を聞いて、拓也もまた考え込む。

「お母さんさ、蘭ちゃんに番について話してやってくれないか?俺は医者だから、患者さんの話や論文のデータから、ある程度話せるけど、実体験はしたことがない。俺は男だしβだ。本当の辛さや悩みはお母さんの方がわかってあげられると思う。俺が話しても番の人に会うことは多分説得できない。医者として不甲斐ないけど。だから、お母さんから1度話してみてほしい。
俺も心身の状態を考えると番に会うのがベストだと思う。」

「わかったわ。今は寝てるから、起きたら話してみるね。」

瞳はそう言って微笑んだ。
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