あなたと運命の番になる
拓也は和真に連絡をとる。

実は数日前、拓也のところに連絡が来ていた。
蘭から連絡が来ないことを心配に思い、主治医の家で療養していることを蘭の母から聞いたようだ。

拓也はあくまで患者の気持ちを第一に考えないといけない。蘭が和真に知られることを嫌がっていることはわかっていたため、和真には病状を伝えずにいた。
ただ、本気で心配していることが伝わってきていたため、和真には好感をもてていた。

拓也はスマホで電話をかける。

スリーコールで、和真がでた。

拓也は蘭の状態を説明する。和真は辛そうな声色だったが、なんとなく分かっていたような様子だった。

拓也がこれからの事を話そうとすると…


「やっぱり蘭ちゃんに会わせてもらえませんか?」

和真は改まった口調で言う。

「蘭ちゃんのヒートが辛いのって俺のせいでもあるんですよね。会って楽にさせてあげたいんです。」

和真の強い意志のようなものを感じる。

「山城さんのせいではありませんよ。番だという人物に会うとΩのヒートは長引くことが多いです。たしかに番の人と触れ合うことでヒートが楽になる可能性は高いです。ですが、‪α‬側が普通の状態ではヒートに耐えられるものじゃないです。」

「強い抑制剤があるんですよね。素人なりに調べました。」

「そうですね。ただ、強い分、体への負担も大きいです。1-2時間ヒートにあてられない持続効果を感じた後、ものすごい倦怠感におそわれます。発熱がおこることも多く、薬が体から完全に抜けるのに約3日かかります。薬を使用した当日は基本的には入院してもらっています。仕事も2日、可能なら3日は休んでいただく必要があると思います。」

拓也は説明する。

「わかりました。
仕事の方は調整しますので、大丈夫です。」

忙しい身であることは容易に想像できるが、簡単に休みを了承する様子に拓也は心の中で驚く。

「今、大黒さんは私の実家で療養しています。私もいますし、大黒さんも環境を変えない方がよいと思うので、2泊程できる荷物を持って家に来ていただけますか?タオル等はありますので持ってきていただかなくて大丈夫です。住所は後でショートメッセージに送ります。家に着いたら、山城さんが服用する薬や大黒さんの様子などはもう少し詳しく説明します。」

「わかりました。よろしくお願いします。」

和真はそう言って電話を切った。
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